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銀河鉄道の夜 / 心を揺さぶる、幻想的で切ない文学

日本文学を数多く読んではいないのだけど、日本文学にも、こんなにファンタジーで、想像力にあふれ、現実離れした物語があったのかと、宮沢賢治おそるべし! とうなった作品でした。
もう何十年も前に書かれた文学なので、今の文体とは少し違うようで、句点がついてなくてずーっと文が羅列してあるから、自分で区切りを見つけないといけなかったりして、なんだか読みにくいなあと思った部分もあったけれど、昔はこんな書き方だったのかなあとか思いを馳せつつ、不思議な世界へと足を踏み入れたような感覚でした。

本編の「銀河鉄道の夜」だけでなく、短編集的な物語も載せられており、そのどれもが示唆に富むようなものであったり、考えさせられるようなものであったり、苦しくて心えぐられるようなものであったりして、全体的な印象としては、悲しい結末が多いなあと感じました。
ホウキ星に騙されて、天空から海の底へ落ちてしまった双子の星。
同じ鳥類なのに仲間はずれにされているよだか。
家に帰る途中で吹雪にあってしまい、遭難する幼い兄弟。
名高い球を贈られて調子に乗り、狐におだてられ、傲慢になった挙句、球が割れてしまったうさぎの子。
銀河鉄道の夜だって、列車に乗っている最中はとても幻想的な世界が目まぐるしく変わるけど、主人公はいじめられていたり、親友は最後には帰ってこなかったり。
物語もそうなんだけど、登場人物が情緒にあふれているというか、感情移入しやすくなっている文体で、物語に没入しやすいからこそ、繰り広げられる展開に心踊らされ、または胸が締め付けられる。

ぼくは特に『ひかりの素足』という小説が、どうにも印象深く、涙を誘いました。
吹雪の中で遭難して、幼い兄弟が雪と寒さの中で苦しみながらも、必死に家にたどり着くために弟を励ます兄の献身さ。
夢の中で地獄に落ち、小さな子供たちが鬼に追い立てられ、痛さも惨さも容赦なく降りかかる中でも、弟を守る兄の優しさ。
最後は神様に救われるんだけど、目が覚めて、現実に戻った時に知る悲しさ。
それまでの兄弟のなまった言葉でのやりとりが愛おしく感じられ、余計に響くのです。

それにしても、「銀河鉄道の夜」で、タイタニック号沈没が語られるとは、思いもしなかったなあ。
いろんな意味で宮沢賢治には驚かされました。

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