a-cure-for-wellness

キュア 〜禁断の隔離病棟〜 / その治療は何のためのものなのか

主人公のロックハートは証券会社に勤めているんですけれども、ちょっとしたヘマをやらかしてしまった。
それが会社の上司にバレて、証券取引員会の監査が入ると非常にヤバいことになる。
このままでは職を失うどころでは済まない窮地に立たされるんだけれども、同時に会社も合併の話が持ち上がっている。
突然ある病院に消えた社長を連れ戻したら見過ごそう、とかいう条件を突きつけられて、ロックハートはスイスの「ウェルネスセンター」という病院に赴くことになりました。
ロックハートは社長のローランド・ペングロークを連れ帰るという任務があるのですが、彼は車で事故に遭い、右足を骨折する怪我に見舞われてしまいます。
すぐには帰ることができなくなった彼は、病院の所長の好意により、しばらく療養することになるんですが、これが事件の始まりとなってしまうのです。

まず怪しいと思うのは「水」。
人間の身体の約 70%は水でできている、なんて言いますが、人間に欠かせない水、必然的に取らなければならない水によって命の危険にさらされる。
これほど怖いものはないのではないか。
ロックハートは水の恐ろしさを見抜き、本当はこの病院にいる患者たちはどこも悪いところがない、むしろ社長なんか青汁とか飲んで健康志向だった、にも関わらずここに療養し始めてからは歯が抜けてきたりとどんどん悪くなっている。
それはなぜか。
水が体を蝕んでいるからだ、その証拠にミイラと化した遺体を見た! と訴えます。
しかし悲しいかな、真実はいつも受け入れられることはありません。

また職員が摂取しているビタミン Bが入った青い小瓶。
これはおそらく水の毒性から身を守るために職員のみが摂取しているものだとばかり思っていましたが、実はもっと恐ろしいものだったのです。
実はこの小瓶の中身、不老の薬だったのです。
地元の帯水層からの水が人間には有毒であるが、水中に生息するウナギには生命を回復する特性を持っていることを発見しました。
男爵は、人間の体を通して水をろ過し、それを生命を与えるエッセンスに蒸留するプロセスを考案していたのです。
この病院に入ったものは 2度と出ていくことがない。
つまりこれは水によってだんだん衰弱していき、弱ったところでろ過装置に移し、搾り取ってミイラとなったら地下のウナギの餌にしていた、ということ。
このようにして病院は長い期間循環しており、1度入ったらもう 2度と戻れない、ということだったのです。

ここまでくるともうわかるのですが、「ウェルネスセンター」の所長は城の男爵その人だったのです。
男爵は 200年もの間、この不老のエッセンスを摂取し続け、また同時に妹の子供を生き長らえさせていたのです。
その子供というのが、ロックハートが出会ったハンナという少女。
彼女は幼い時からずっと病院で暮らしており、病気が治ったら父親が迎えにくる、という希望をずっと持っていました。
しかし実の父親がずっとそばにいたとは! という展開です。

この城の城主であった男爵は「純血」を受け継がせようとしていました。
「純血」とはつまり、自分たちの血縁以外の血を混ぜることなく、同じ家系の中だけで子供を作ろうとすることです。
そうなると家族間の中で子供を作ることになるのですが、この行為を「近親相関」と言います。
「近親相関」には問題があると聞いたことがあります。
僕のうっすらとした記憶では、家族の間で子供を持つと、その子供は奇形児が生まれやすくなったり、何かの障害を持って生まれやすくなると聞いたことがあります。
それは血液など DNAが似通っているため、非常に「濃く」なるわけです。
専門的なことはよくわからないんですが、形成の「バグ」のようなものが起こりやすくなるのではないかと思うのです。
実際にヨーロッパの歴史でも「近親相関」によって純粋な血縁を残そうとしたけれども、奇形児が生まれたり、早死にするなどして、問題が色々起こったそうなのです。

この男爵は妹との間に子供を作ろうとしました。
しかし妹は不妊で子供が作れなかった。
男爵は不妊を療すために色々と実験をした。
城の城下には小さな村があるんですが、その村の人たちは城の住人を快く思っていなかった。
その理由として男爵は妹の不妊治療のために、村の住人を実験の道具としていたのです。
男爵の研究により妹は自分との子供を妊娠することに成功するのですが、実験の道具とされていたことを知った住人は妹を焼き殺し、胎内から赤ちゃんを引き摺り出して捨てる、というとんでもない行動をとる。
この城には深い闇があったのです。
実はこの捨てられた子供がハンナだった。
男爵はハンナが「女」として成熟するのを待っていた。
ハンナに生理がきたことを知った男爵は、昔妹にしたように娘と結婚し、子供を設けようと画策していたのです。
自分の血を残すための壮大な計画。
このパズルを解いたロックハートによって男爵は 200年前と同じく、皮肉にも城と共に燃えることになりました。

アクション映画のイメージがあるヴァービンスキー監督のホラー映画。
いろんな謎が随所に散りばめられていて、物語の最後の方にピースが一つずつはまって全体像が見えてくると、かなり壮大な時間がかかっていて、しかも不気味な真実が浮かび上がってくる。
結構観ててゾクッとします。

その他の記事