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ゲティ家の身代金 / 家族の命よりもお金を優先した大富豪

イタリアで起こった実際の誘拐事件をもとに制作された今作。
サウジアラビアで石油の掘削に成功し、大富豪へと成り上がったジャン・ポール・ゲティ。
金を稼ぐとこに貪欲で、多くの資産を手にしても、もっと稼ぐことに喜びを感じている男。
そんな彼の孫であるジョン・ポールが、イタリアのローマで誘拐される。
大富豪の孫ということで、身代金目当てで誘拐され、犯人は 1200万円を請求する。
しかし大富豪のゲティは身代金を支払うことをマスコミの前で公に拒否し、孫の命よりもお金を優先することを選ぶなど、ゲティの金銭感覚の基準は一般の人と違っていた。
誘拐の連絡を受けた母親のアビゲイルは、なんとか息子を助け出そうとゲティに詰めよるも相手にされず、誰も助け出そうとしない一族を尻目に、独自で救出への道を模索する。

家族よりもお金を選んだ富豪

ゲティは決して薄情な富豪ではなかった。
表向きは身代金を払う気はないと公言していても、裏では警護を担当している元 CIAのチェイサーに、孫を取り戻してくるように指示を出していた。
とはいえ、倹約家のゲティは、できるだけ金をかけずに救出するように言いつける。
多くの孫の中でも一目を置いているポールに事業を引き継がせようと目論んでいたこともあり、情がないわけではなかった。
人の命を軽く見ているわけでは決してなかったが、はたから見れば、人命よりもお金の方が大事だと思っているように見えてしまう。
孫の救出を頼まれたチェイサーは、母親のアビゲイルと協力し、地元警察の手を借りながら、ポールの行方を追っていく。

捜査の途中で、ポールは偽造誘拐を計画し、ゲティから金を引き出そうと企んでいたことが発覚する。
これにより、今回の誘拐事件もポールが仕組んだことではないか、という疑惑が持ち上がり、報告を受けたゲティは意気消沈してしまう。
孫のことを信じていたのに、家族でさえ自分の資産・金を無心しようとしていた。
長年の経験により、ゲティはお金に対する人の醜さに嫌気がさしていた。
さらに家族でさえお金に群がろうとしていた。
彼は決して慈善のためにお金を使おうとはしなかったが、ポールのことで家族のことも信用できなくなってしまう。

ゲティは、人間はさまざまな理由で裏切るものだが、美術品などのコレクションは美しさもその価値も裏切ることがないという信条を持っていた。
美術品はその価値の分だけ自分を愉しませてくれる。
さらに税金控除の対象にもなる。
価値の面でも、信用の面でも、節税の面でも、ゲティは美術品にお金を使うのは厭わない人間だった。

ポールを助ける者

母親のアビゲイルは、身代金を払おうとしないゲティを説得しようと試みるも、彼は真面目に取り合おうとはしてくれなかった。
1200万円という大金を請求され、大富豪のゲティは十分に払える資産を持っているのに、身代金を払おうとはしなかった。
ゲティは 14人の孫がいるので、一度お金を払ってしまえば他の孫も誘拐の標的になり、事件が続くことになりかねない。
誘拐されても決してお金は払わない、犯罪には屈しないという意思を表明するためにも、ゲティは取り合おうとはしなかった。
アビゲイルは、孫の救出を依頼されたチェイサーと共同で誘拐犯の正体を追い、交渉していく。

誘拐を企んだチンクアンタは、ポールの世話をしていきながら、だんだん情が移っているようだった。
もし自分の家族が誘拐されれば、どんなことをしてもお金を作って身代金を払い、家族を助け出そうとする、とポールに語っていた。
普通、家族が誘拐されれば、取り戻すために交渉のテーブルに着く。
しかしポールの叔父は大富豪なのに、身代金を払おうともしない。
母親とは交渉を続けていたが、お金がないと言って払うのを渋っている。
身代金を払ってもらえず、ずっと誘拐犯に拉致されたままのポールは、家族に見放されたように感じ、どれ程心細かっただろうと思えてならない。
大富豪の孫なのに見捨てられているようなポールを見て、チンクアンタは彼を不憫に思ったのかもしれない。
だから、ポールが逃げ出そうとしてもあえて見過ごし、命を救おうとかばったのではないかと感じる。

結局、チンクアンタのボスは身代金が払われないことに憤り、ポールの耳を削いで新聞社に送りつけ、命の危険をチラつかせることで、ゲティから強引に金を支払わせようとする。
さすがのゲティもいろいろあってお金を払うことに同意し、400万円で手を打ち、ポールは解放された。
お金を重視した富豪の最後と、家族の愛情を重視した母親の最後。
どちらに価値を置くかは、人それぞれの価値基準による。

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