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最悪の選択 / 犯した罪を贖うために迫る決断

リアルで、重々しく。現実的で、どこまでも残酷。
たった一つの不運な出来事によって、今までの全てが壊れていく。
観る時は要注意だ。
軽々しく観てしまえば、行き着く先は心をえぐられてしまう。

ヴォーンは腐れ縁のマーカスとともに、スコットランドの森の奥へ狩に出かけた。
ヴォーンにはもうすぐ子供が産まれ、父親となる予定だった。
あまり乗り気ではなかったものの、マーカスの誘いを断れず、渋々付いていくことにした。
森に探索に入り、1時間ほどしたところで獲物を認めた。
マーカスに急き立てられ、ヴォーンは鹿に狙いを定める。
ヘッドショットを決めようとトリガーを引いた瞬間、鹿は頭をもたげた。
そしてその奥に偶然いた人を撃ち殺してしまった。
動揺したヴォーンは駆け寄ってみると、撃ち殺したのは少年だった。
少年の父親は駆け寄って息子を抱きしめた。
そして彼を殺したヴォーンを殺さんと勢いづく。
しかし父親はマーカスによって胸を撃たれ死んでしまう。
ヴォーンを助けるために、証人を黙らせるために、マーカスは殺人を犯してしまう。

マーカスは機転が聞き勇敢な性格をしているように見える。
平静を保ち次に何をするべきか手を考える。
ヴォーンは人の良さそうな人物で、正直に話すべきだと主張する。
だがもう引き返せないマーカスは、早めに逃げ出すことを決める。
マーカスとヴォーンは夜に再び森に出かけ、2人の遺体を地中に埋める。
彼ら親子は旅行者だと思い、埋めてしまえばこの広い森の中で見つかることはないだろうと予想していた。

2人は森の近くの村のホテルに泊まっていた。
夜明けに早めに村から逃げ出そうと計画していたが、村の者に因縁をつけられ、脱出が伸びてしまう。
その間に親子が失踪していることを知らされる。
旅行者だろうと思っていた親子は、村の住民の親戚だったのだ。
村の男たちは総出で親子を探し出すため森に入り、2人も同行することになった。
マーカスは村の住民の視線を気にするようになっていた。
今まで平静を装っていたものの、予想外の展開が続き、殺したことがバレているのではないか、と疑心暗鬼になっていた。
犬を連れた捜索で嗅ぎつけられるのではビクビクし始める。
2人の予感は当たり、親子の遺体は住民たちの手で掘り返された。

一緒になってその場にいれば疑われることはなかった…かもしれない。
最後までシラを切り続ければ、一緒にむごさに怒りを表せれば。
だけど人を殺し埋めた事実を平然と受け止めきれる人間はそういないだろうと思う。
そんな人はサイコパスぐらいだろうか?
2人は耐えきれずに逃げ出してしまった。
自分たちが犯人ですと言うようなものだ。
結局ヴォーンは捕まり、事の次第を全て打ち明ける。
マーカスも捕まるも口を割らなかったのだろうと思う。
正直者のヴォーンは、殺人を犯し隠蔽しようと画策したマーカスを撃ち殺せと村の者に命令される。
殺せば逃がしてやると引き換えに。

何事もなかったかのようにヴォーンは元の生活に戻る。
しかしそこにはかつての彼の面影はなくなってしまったのではないか。
心に闇を抱え、誰にも言えないままこれからの人生を生きていかねばならない。
あれほどの体験をしながら元通りとはいかないだろう。
言葉では表現できない心痛が、最後の眼差しで訴えかけてくる。
全てを知る「観衆」をしかと見つめながら。
彼の底しれぬ狂気を感じる最後だった。

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