court-play

法廷遊戯 / 過去の罪を償ってもらうために仕組まれた復讐劇

とあるロースクールで行われていた「無辜ゲーム」。
首席で修了するような抜群の頭脳を持った人物が始めたこのゲームは、裁判を簡易的にしたものだった。
同害報復を基本とした判決で、犯人が行なった罪と同じ分だけ、被害者は相手に罰を与えることができるというもの。
ゲームを始めた人物は審判役となり、判決を言い渡す立場にいた。
彼はその人望により、正しい判決をしてくれると信頼されていた。
しかし「無辜ゲーム」はある目的を持って始められたものであり、このゲームがのちに重大な犯罪の争点となっていく。

仕組まれた裁判

まさかこんな結末になるなんて思わなかった。
同じロースクールのクラスメイトだった馨 (かおる) を殺害した罪を着せられた美鈴は、同じロースクールで友人だった清義に弁護を依頼する。
法律家を目指していた 3人は、被害者と加害者、そして弁護人という違う立場になってしまった。
清義は弁護士になって日が浅かったものの、馨を殺していないと主張する美鈴のことを信じ、依頼を受けることにした。
状況証拠では美鈴が犯人であると指し示していた。
しかし、裁判のクライマックスに差し掛かったところで、事件の詳細を記録した動画が公開されることになり、美鈴の無罪は証明された。
美鈴は殺人を犯していなかった。
だが、弁護を引き受けた友人の清義は、その状況に不審を抱いていた。
美鈴は本当に馨を殺していないのだろうか。
本当は馨を止めるはずだったのに、彼女はシナリオを変更し、馨を殺したのではないだろうか、と。

美鈴が殺人に問われた経緯には、馨が関わっていた。
むしろ、美鈴が被告人となり、清義が弁護を引き受けるのは、馨が計画していたことだった。
美鈴と清義は、馨の緻密な計画の上で踊らされようとしていた。
その企みを気抜いた美鈴は、馨の計画を狂わせ、土壇場になって馨を殺すことを思いついたのだ。

過去に起きた冤罪

なぜ馨は 2人を裁判に引きずり出そうとしたのか。
それは彼らの運命が交わってしまった過去の出来事にあった。
高校生だった美鈴と清義は、過去に起こした犯罪によって、自身を守るためには、法律という知識を身につけなければいけないと思い、法律を勉強するために大学に進学したいと考えていた。
しかし彼らには親がおらず、自分たちだけで入学費を工面するのには無理があった。
そこで彼ら 2人は、当時まだマイナーだった痴漢を偽証し、大人からお金を巻き上げていた。
そしてある日、一人の男性に目をつけた彼らは、同じように痴漢の冤罪をなすりつけようとした。
しかし相手は警官で、美鈴の犯罪を見抜いてしまった。
しかし清義は美鈴を助けるために警官を階段から突き落とし、痴漢を録画した偽証のカメラを残すことで、警官は犯してもいない罪で裁かれることになった。
そしてその警官の息子だった馨は、その一部始終を目撃しており、父親を犯罪者にした犯人と、冤罪を無抜けなかった司法に復讐することを決意し、長い歳月をかけて相手を特定し、罪を償わせる方法を虎視眈眈と練っていたのだった。

馨は父親を犯罪者に仕立て上げた美鈴と清義がいるロースクールに入学し、彼らの過去を暴き、脅しをかけ、ボロが出るのを執念深く待っていた。
着実に証拠を集め、父親の再審査を開いてもらえるための手立てを周到に用意し、2人が正式に裁きを受けるための方法を考えていた。
そして馨は、自分を殺そうとした殺人未遂の罪で美鈴を裁判にかけ、清義を彼女の弁護人になってもらい、法廷の場で彼らの過去の犯罪と父親の冤罪を明らかにし、精神を病んで亡くなった父親を法的に救うための計画を実行した。
自分の命を危険に晒してまでも裁判を行おうとした馨は、そこで本当に命を落としてしまうことになってしまった。

罪を暴露されることは美鈴にとって面白いことではない。
だから馨が命の危険を犯そうとするタイミングを狙って、本当に殺してしまい、自分が一人で罪をかぶることを選んだ。
馨の思惑が外に漏れなければ、過去を追及されることはない。
美鈴は清義を守るために、馨を殺したのだった。
動画にうまく映らないようにして。
しかし清義は、馨の思惑と、美鈴の思惑に気づいてしまった。
それで清義は、過去の罪を償うために、冤罪で亡くなった馨の父親を法的に救うために、罪を贖う道を選んだ。

この小説の主要な登場人物 3人は、それぞれに悲しい過去を背負っていて、心に深い傷を負っていた。
生きていくために、大学に進学するために犯罪を重ねていた美鈴と清義。
そんな彼らに冤罪を着せられ、父親を犯罪者に仕立て上げられた馨。
確かに冤罪を着せた 2人の行いは悪いことだけど、そうせざるを得なくなった彼らの境遇もまた責めることはできないと思うのだ。
そういう点では誰もが被害者だった。
でも、加害者に転じてしまったことで、今回のような悲劇が起きてしまった。
また司法でも、人を裁く難しさというものが浮き彫りになる。
罪を罪と確信できるような確実な証拠がなければ、安易に有罪にすることはできない。
でも状況が揃ってしまえば、司法でも見抜くことは難しく、冤罪をなくすこともできない。
裁判の仕組みと、それに付随する罪の判決の難しさに想いを馳せる展開だった。

物語の中で語られる同害報復。
同害報復とは、簡単に言えば「目には目を、歯には歯を」という考え方。
罪を犯した犯人は、犯したのと同じ分だけの罪を償うことになる。
この考え方は残酷のように思えるかもしれないが、本当は慈悲のある償い方だという。
目を奪われた者は、悲しみと怒りによって復讐し、相手の命を奪うことを望むかもしれない。
しかし同害報復であれば、同じ分だけしか返せないので報復の抑止力になるし、それ以上の罰を求めないという寛容の精神が根底に流れているという。
確かにそういう見方もできるし、本来はそうだったのかもしれないなと、目からウロコだった。

その他の記事