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小説家として / ネタの参考にするために住人たちをもて遊ぶ

小説家になりたい男と、小説家で文学賞を受賞した妻。
アルバロという小説家になりたい男は、3年も学校に通っていて、作品を書きあげるたびに、先生からは、「中身がない、登場人物が生きていない、魂がない」と他のクラスメイトがいる前で散々に酷評されてしまう始末。
お前の作品には現実感がない、真実味がない、もっと人生を生きて、観察して、周りの音を聞くんだ、とアドバイスをされる。
アルバロは妻が浮気していた現場に偶然鉢合わせ、一人の空間が欲しいと思って賃貸を借り、別居する。
そこでアルバロは、先生からもらった助言を頼りに、そのアパートに住む住人たちを観察し始め、自分の小説にインスピレーションを求め始める。

ネタを探すために住人を翻弄する

『その住人たちは』の展開にすごく似ているんだけれど、アルバロはどんな住人が住んでいるのか、その人たちはどんな生活をしていて、どんな問題を抱えているのか、徐々に探っていくようになり、小説の参考にしようと考え始める。
小説のネタを仕入れるためには、一夜の関係を結ぶことも厭わない。
聞こえてくる夫婦の会話を盗み聞きするし、録音だってする。
管理人と仲良くなって、住人に接近するために芝居だって打つ。
私にできることならなんでも力になるよ、なんて耳障りのいいことを言って情報を引き出し、本当は住人にとって有利に運んだはずのこともぶち壊して、ダメだった、残念だ、と言って善人面をする。
現実の出来事を小説に落とし込んで、新しい展開、刺激のある展開を得るためだけに住人を利用する。
必要がなくなったらポイ捨てするし、本当に生活に困っていて、将来の人生、子供達の生活を左右するのに、窮地に陥らせてどんな行動をするのか観察する。
独り身の孤独な老人に付け入り、秘密の情報を他人に漏らして、殺人事件にまで発展させる。
小説を書くためだけにネタにされ振り回される住人たち。
アルバロは「人生を生きろ」とアドバイスを受けたが、ある意味でスリリングな行為を行なっていることで、「生きている」と実感していたのかもしれない。

着々と小説を執筆し続けるアルバロ。
しかし先生からは、もっとひねりが足りない、と言われる。
アルバロとしても、これからどんな風に誘導して、どんな風に進めていくか計画を練っていたようだ。
しかし、計画よりも早い段階で老人が殺され、殺人容疑をかけられてしまう。
アルバロはもちろん身に覚えがなかったが、状況証拠は彼の犯行を示していた。
アルバロは隣の移民家族をお金に困っている状況に誘導し、現金を溜め込んでいる老人を襲わせて、金を奪わせようとする。
そのために金庫の情報や暗証番号をさりげなく伝えてやった。
思惑通り犯行が行われたが、凶器は自分が貸したドライバーだった。
アルバロは自分が立てた計画に裏をかかれて利用されたことに気づき、「はめられた、これこそひねりが効いているじゃないか」と自分の作品よりも出来のいい結末に自嘲する。
このオチのあり方は『その住人たちは』と比べてスッキリした。

書くことの苦悩

アルバロはどこまでも先生のアドバイスに忠実に従っている感じだけど、多分、自分でアレンジすることができない、その物語からインスピレーションを生み出すことができないのでは、となんとなく感じた。
もし小説が書き上がったとしても、現実に即しているのなら、発売された小説を、その住人が偶然読んだ時に、「もしかしてこれは自分たちのことじゃないのか?」と気づいてしまうのでは、とも思った。

ぼくは小説家でもなんでもないし、ただの感想を書きなぐってるだけなんだけど、パソコンを前にして全然筆が進まない気持ちはよくわかる。
さあ書こう、と思っても全然言葉がでてくなくて、果たしてこれは書けるんだろうか、どこから書き始めたら良いんだろうか、書こうと思えば思うほど考えがまとまらなくて書けない、そういう気持ちがよくわかる、と途中すごく共感した。
とはいえ、全裸になったりとか、自分のモノを投げ出したりとか、アルバロのようなことまではしなくても書けるから、まだマシだと思いたい。
役者のハビエルもよくやったよね、と感心する。
本当に唐突に脱ぎ出すんだから。
ちなみに役者のハビエルさん、『その住人たちは』という作品でも主役をしているけれど、かなりブラックジョークな嫌〜な感じのテイストだった。
今回もまさか同じようになるとは思いもせず、「また来たか」って感じだった。
後味が悪くて苦味が残る映画なので、視聴には注意が必要だ。

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