frankenstein

フランケンシュタイン / 満たされない愛への渇望が悲劇への始まり

フランケンシュタインといえば、人間によって作り出された人造人間で、巨大な体と醜い姿と凶暴な性格、といったイメージがある。
過去にはフランケンシュタインを題材にした、数多くの映画などの作品が生まれている。
その怪物の名前が「フランケンシュタイン」だ、と思っている人が多いのかもしれないが、フランケンシュタインは怪物を作り出した博士の名前であって、怪物の名前ではないのだ。
ぼくも怪物のことを指しているのかと思っていたのだが、怪物には特定の名前を与えられていない。
原作を一通り読んでみるに、ただ「怪物」としか呼ばれていない。
そして一般的な凶暴そうなイメージがある怪物だが、小説では全く逆の性格をしている。
怪物は「必要に迫られて」凶暴になっているだけで、本来はそのような態度をりたいと望んでいないことを知って、今までのイメージが覆された。

フランケンシュタイン博士は、自然科学への道を歩んだ。
当時の科学は現実に沿った研究を行おうとしており、博士にいわせれば、どうにも退屈なものだったらしい。
博士は錬金術など、人間の可能性を広げる幻想ともいえるものを信奉しており、非現実的なことに挑戦しよう! という意欲に燃えていた。
彼はさまざまな学問を熱心に勉強し、人間が不死になれる可能性を見出そうとしていた。
その研究の一環として屍者のパーツをつなぎ合わせ、生命を与える実験に没頭していた。
そしてついに博士は死体に命を吹き込むことに成功したものの、目標を達成した途端に浮かされた熱から覚め、みるからにおぞましく醜いその怪物の姿に怯え、逃げ出してしまう。
博士はいつその怪物に襲われるかとビクビクしていたが、日が経つにつれ冷静さを取り戻していく。

人間から作り出された怪物。
怪物は最初から凶暴な性格だったわけではない。
彼は心根の優しい性格で、人から愛されることを望んでいた。
彼は愛に飢えており、お互いを受け入れ、分かり合える相手が欲しいと望んでいた。
しかし彼の巨大な体と醜い容姿は見る者を恐れさせ、彼に近づこうと思う者はおらず、むしろ恐怖の対象として忌み嫌われた。
人間はお互いを想い合える相手と心を通わせることができるのに、自分には誰も寄り付かず、孤独を噛み締めなけれなならない境遇を嘆き、人間への恨みを募らせる。
小さな子供であれば、偏見のない目で見てくれるだろうと考えたものの、おぞましい姿に怯えた子供に衝動的に手をかけてしまい、初めての殺人を犯してしまう。

怪物は、フランケンシュタイン博士に愛されたかった。
しかし生みの親は醜くおぞましい創造物を愛することができなかった。
怪物は、博士に伴侶を作ってほしいと願い出る。
自分を愛してくれる存在が一人でもいてくれれば、人間を襲うようなことは死なし、遠く離れたところで 2人で暮らし、決して危害を加えるようなことはしないからと懇願する。
それを聞いた博士は一度はその願いを聞き入れるも、
もし 2体目の怪物が彼を受け入れなかったとしたら?
2体目の怪物も麗しい姿の人間を欲してしまったら?
醜い容貌から人に迫害され、復讐をするようになったら?
自分はまた殺人兵器を作り出してしまうのか?
といろんな考えが浮かび、結局作りかけていた 2体目を破壊してしまう。
怪物は自分の望みが受け入れられなかったことに激怒し、博士を地獄の責め苦に合わせるための復讐を誓う。
怪物はこのとき、本来の優しい性格を押し殺し、本当の怪物へと変身してしまうのだ。

物語の後半は本当に辛く苦しく、悲しみの雲覆われ、最後まで晴れることはなかった。
怪物は復讐のために博士の大事な友人や家族を手にかけて行った。
自分のせいで愛する者が殺された。
友人が死んだのも、全ては自分のせいだと嘆き悲しみ、怪物がいつどこから襲って来るかわからない恐怖に怯え、人間社会に残酷な殺人兵器を送り出してしまった己の所業を責め、罪の意識によって精神は衰弱し、みるみる弱り果てていく。
怪物は、博士の結婚相手も手にかける。
伴侶を持てなかった心の苦しみを、博士にも味あわせてやるために。
この出来事によって博士は怪物を殺すことだけを生きがいして、地の果てまでも追っていくことを決心する。

最終的にどちらも救われない悲しい終わり方を迎える。
怪物も博士も、どちらもかわいそうで、どちらも悲劇。
熱を入れて作り上げた作品の結果は、博士の醜い部分が詰め込まれて具現化したものかもしれない。
自分の醜い部分を直視することができなかったから、怪物を愛することができなかったのかもしれない。
いろんな解釈ができるので、物語は奥が深い。
こんなにも悲劇的な内容だとは思いもよらなかった。

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