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銃とチョコレート / 怪盗の隠された宝のありかをめぐる大冒険

児童文学書のような感じで、ひらがなが多く、子供でも読みやすい文体になっている。というか、内容的には子供向きなようにも感じる。
でも、物語は終盤までとても嫌な展開。出てくる登場人物はみんな嫌なやつで、一癖も二癖もある。
主人公の男の子リンツのことを侮辱する奴もいれば、みんなの憧れの存在として敬われている人物が、実は腹黒くて、子供でも容赦なく騙しにかかる。
信じられるのは家族だけ、という純粋な心をした子供には残酷な展開で、怒りとか悲しみが募りそう。
リンツ少年ががんばればがんばるほど、周りの人物の非情さが目立ってくる感じ。
少年に共感できるように、あえてコントラストを強めに設定されているのかな、なんて思うのだけど、個人的にはとても嫌な人たちだった。

怪盗と探偵が賑わす世界

リンツ少年の世界では、怪盗ゴディバと名乗る人物が、世界の高価な宝物を盗んでいた。怪盗ゴディバは事件現場にカードを残しており、全部で 20個のお宝を盗み出していた。
警察の捜査では迷宮入りしそうだったが、怪盗ゴディバを捕まえるために颯爽と現れた一人の人物がいた。その名も探偵ロイズ。
悪党を捕まえようとするロイズは世間の注目を集め、頭の良い彼の推理に、みんなは憧れを抱いていた。
子供たちの間では、怪盗ゴディバと探偵ロイズの話で夢中になっていた。
探偵ロイズはなかなか尻尾をつかむことができないため、みんなから情報を募っていた。
そこに、リンツ少年があることをきっかけに手に入れた秘密の地図が、怪盗ゴディバにつながるかもしれないということで、探偵ロイズと面会するところから、物語は大きく動き出す。

色々と情報が錯綜する中で、もしかしたらロイズは、探偵のフリをした怪盗ゴディバなのではないか? ロイズとゴディバは同じ人物なのでは? なんて思いながら読んでいたけど、全く別人だった。
むしろ怪盗ゴディバは少年リンツと深い間柄だったことが最後に明らかにされる。
さらに、ゴディバゴディバと言っていたけれど、そもそも最初の盗難事件の時に間違った情報が流れてしまったらしく、名前が「ゴディバ」ではなかった、というオチ。
ローマ字では「GODIVA」だけど、本当は「GODDIVA」で Dが 1個足りないまま知れ渡ってしまった。本当の意味は「神の歌姫」という意味があるらしい。
それが何を意味するのかは、最後まで読んでみなければ分からない。

少年の過酷な境遇

この物語は、マイノリティな立場の少年が、裏切りや落胆やいじめなど、ひどいことがたくさんある中で、予想外の出来事に翻弄されながらも、過酷な運命に負けず、優しい心を持って、ひねくれずにたくましく乗り越えていく冒険譚、という印象がある。
ヨーロッパの移民問題も含んでいるような感じで、少年リンツも戦争移民の子供として、新しい街に移り住んできていた。
移民が増えれば、元の街の住民は仕事を圧迫され、仕事にあぶれ、働けない者も出てくる。
移民さえいなければ自分たちの仕事が奪われずに済んだのに、という反感から、移民の人や子供は嫌悪され、給料のいい仕事に就くことはできないと宿命づけられている。
リアルな世界情勢も子供にわかるように描かれているので、そういう示唆的な部分も含んでいると思った。

ドゥバイヨルという年上の少年は、もともと高貴な立場の家系で、上流階級の人間だったらしい。しかし、何かがきっかけとなって家系は落ちぶれてしまい、平民へと成り下がってしまった。
そんなことの不満が溜まっているのか、ドゥバイヨルはかなりひねくれた荒くれのガキ大将のような捻じ曲がった性格になってしまい、他人をいじめずにはいられないらしい。
家系を襲った悲劇が彼をそうさせたのかもしれないが、何かのきっかけで改心するのだろうかと少し期待していたけど、どの思いも裏切られてしまった。
少年リンツは、自分が見つけた宝の地図が盗まれてしまい、ドゥバイヨルが盗ったのだろうと見当をつけた。
しかし、意外と聡明なドゥバイヨルの推理にて、探偵ロイズの本当の姿が明らかにされ、ロイズの思惑を阻止するために、リンツは彼と一緒に冒険に出ることとなる。
その道中は色々とヒドイものだったけど、ドゥバイヨル少年もまた、心の中では熱い闘志を持っていたんだろうな、と何気なく感じた。

児童文学には、主人公がひどい目にあったり過酷な目にあったりするのが多いように感じる。
そんな苦労や困難を乗り越えて、一つ大きく成長する物語が、児童文学の教えであって、特徴なのかもしれない。
とはいえ、冒険の本当の思惑が明らかにされた時には、タイミングが悪すぎるよ、と思った。

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