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銃・病原菌・鉄 下 / 肥沃な大地のおかげで人類の文明は発展した

上巻では、なぜヨーロッパ人は新大陸の先住民を制圧できたのか、なぜアフリカやアメリカやオーストラリア大陸に住む人種が、ヨーロッパやそのほかの地域を制圧するようにならなかったのか、その理由を人類の生活様式の歴史から考察した。
簡潔にまとめたのが表題の「銃・病原菌・鉄」だったのだ。
これらが生まれる要因になったのが、人類の定住生活であり、狩猟採集民から農耕民への移行だった。
動植物を育て、人口が増加し、社会を形成し、技術を発展させた。

しかしこれらはすべての地域で起こったわけではなく、ユーラシア大陸という東西に長く、環境が似ているからこそ、その他の部族に広まっていった。
アメリカやアフリカ、オーストラリア大陸は南北に広がっており、場所によって動植物が育つ環境が異なるため、生活が安定することがなかった。
人類に文化や技術に差が広がったのは、生活する地域によって左右されたためであり、人種間による能力の差が原因ではない、という結果が導き出された。

農耕民へと生活スタイルを変えた部族は、収穫した穀物を保存しておくための蔵を作り、どれくらいの量を保管しているか、といった帳簿をつけるために文字が発明された。
文字を発明するというのは並大抵のことではなく、いろいろな試行錯誤を重ねられた結果、アルファベットができたようだ。
文字が発明されたことで、物語や詩で人を虜にさせたり、航海誌などの記録が残されることで有用な情報が受け継がれ、後続への貴重な情報源となった。
知識の伝搬が口頭から書物となることで、数多くの人の手に渡ることができ、文化を高めていく。
文字は、人間が定住生活に移行したことで生まれたのだ。

文字をはじめ、銃や鉄の加工、技術の発明は、「必要だからこそ」発明された、と考える人が多い。
しかし、実際は必要だと感じるのは後々のことであり、「必要だから」という理由で発明されたものは少ないようだ。
それよりもむしろ何気なく作られたものが、別の人の手によって改良され、支持を得ることで「発明」と認知される。
蒸気の技術は、当時の炭鉱現場の環境を良くしようとして発明さたもので、その技術を列車や船に応用し、世間から支持を得たことで広まった。
車もその便利さに人々が気づきはめてから普及したのであって、それまでは馬車が道を行き交っていた。
画期的な発明をしたとしても、時代が追いつき、その有用性に人々が気づかなければ広まることはない。
最初の発明は突飛すぎて日の目を見ることは意外と少ないのだ。

定住生活により農耕が盛んになり、人口が増えたことで管理する立場の人間が生まれ、農業以外の新たな職種が生まれ、人間の社会を形成していった。
最初は血縁関係者によって寄り集まっていた集団が、他の部族と関わり合い、他の集団と関わり合い、内部の揉め事をうまく収め、社会的意思決定が正しく下され、資源を再配分する経済が確立されることで、有用な技術を発達させることができる。
そのような集団は兵力や軍事力を拡大することができ、生産性の高い土地を奪取することができる。
それはつまり、自分たちよりも弱い社会を呑み込んでいくことができる。
このようにして国家が形成され、他の土地を侵略することができる。

ずっと狩猟採集民として生きてきた人間たちは、現在になってもその生き方を変えていない。
人類は農耕民になり、定住生活を始めてことによって、現代のような高度な文明を作り上げることができたのだ。
そして動植物を生育しやすい環境が、東西に渡って広く分布していたからこそ、文明の発展を後押しすることができた。
ユーラシア大陸が、アメリカやアフリカ、オーストラリアのように、栽培の再現性が低い環境であれば、人類の歴史は変わっていただろう。
ユーラシア大陸という肥沃な土地があったことで、人類の発展の下地となっていたのだ。

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