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銃・病原菌・鉄 上 / 人類の発展に差が生まれた要因

なぜ人類には裕福な地域もあれば、貧しい地域もあるのか。
なぜ産業が発展した人種もいれば、狩猟採集民や農耕民のような生活を未だに続ける部族がいるのか。
どのような要因によって、文化や生活や貧富の差が生まれることになったのだろうか。
著者はこのような素朴な疑問を抱いた友人の問いかけによって、遠大な人類の歴史をひもときながら、これらの差が開く原因を調査し始めた。
そして著者が導き出した答えが、題名の「銃・病原菌・鉄」であり、ヨーロッパ人が新大陸を制圧できた要因だったのだ。

ヨーロッパ人はアメリカ大陸を発見したとき、引き連れていた人数はわずか数百人ぐらいだった。
対してアメリカ大陸で生活していた部族は、数千人規模の大きな社会だった。
数だけ見れば、アメリカ大陸に足を踏み入れたヨーロッパ人は劣勢だ。
しかし彼らには、先住民には持っていないものがあった。
それが例の「銃・病原菌・鉄」だった。
先住民は鉄を加工する技術を持っていなかったので、銃や鎧の存在を知らなかった。
また病原菌に対する抗体を持っていなかったので、ヨーロッパ人から持ち込まれたウイルスで人口は激減した。
さらに馬に乗った騎乗兵への戦い方を知らなかったので、数千人の部族も数百の侵入者に対してても足も出なかった。
そのため先住民は駆逐され、ヨーロッパ人によって制圧されてしまった。

銃・病原菌・鉄が直接的な原因だったとはいえ、当初の疑問は解決されていない。
なぜヨーロッパ人は銃や鉄を加工することができたのか。
なぜアメリカの先住民がヨーロッパを征服することにならなかったのか。
それには大陸間の気候と環境の差が、制圧の歴史を決定づけた。
アフリカ大陸からユーラシア大陸へ移動した人類は、シリアやパレスチナ、エジプトあたりの、「肥沃三日月地帯」といわれる地域に進出した。
この地域は温暖な気候とさまざまな植物が茂っており、ここで定住生活を送った農耕民族は植物を栽培するようになる。
ユーラシア大陸は東西に幅広いため、同じ緯度上にある地域は似たような気候にあるため、肥沃三日月地帯で栽培された植物が、別の地域で栽培されても、比較的生育しやすかった。
それに比べ、アフリカ大陸やアメリカ大陸は縦長いため、緯度が変われば環境も変わり、植物が一定に育たなかった。
植物を栽培できる地域に住む人種は定住生活を選んだが、生育植物が変わる地域に住む人種は、狩猟採集生活を続けた。

動物についても同じようなことがいえる。
成長スピードや性格や気質や食べ物などにより、家畜となる動物は数が限定されており、結果、家畜に適した野生動物が数多く生息していたのが、ユーラシア大陸だった。
そのほかの地域では、人間を襲う凶暴な動物が多かったり、狩の対象だったりして、動物を世話するまでに至らなかった。
動物を家畜として飼育するのも、人類が定住生活をしてからであり、農業を手伝わせる目的があった。
農耕民に移行していない狩猟採集民は、そもそも動物を飼おうとはしなかった。

人類は定住生活を送り、農業を開拓することで、収穫数を記録するために文字を使うようになった。
収穫を保存するようになり、選ばれた人間は管理する側に回り、収穫された穀物を保管し、奪われないように守る職業が生まれ、農業で働かなくても食べていける人種が誕生した。
安定して食料が確保できるようになると、人口は増加し、部族から街、都市、国へと発展していった。
人口が増加することで、家畜に宿っていた病原菌が人間にも感染するようになり、人口の密集地でチフスやペストなどの病気が蔓延する。
農業は汚物を肥料にして植物を育てていたので、ため池に群がる蚊などによって感染し、街では下水処理が整備されていないため病原菌の温床となり、数多くの病気が蔓延する。
しかしいずれは人間に抗体ができることで病気は治まる。
鉄の鋳造技術によって銃や鎧が作られ、航海技術の発展により新大陸が発見され、ヨーロッパ人が侵略し、制圧することとなった。

アフリカ大陸やアメリカ大陸、オーストラリア大陸など、ユーラシア以外の大陸は、ほとんどの部族が狩猟採集民を続け、栽培できる植物にも制限があり、人口もあまり増えなかったため都市として発展しなかった。
地域によって生活や技術に差が生まれたのは、住む環境によって動植物や技術の発展が異なったためで、人間として能力に差があるわけではない、ということ。
持てる者と持たざる者の差が、新緑する側とされる側の差へと命運を分けた。
もう何千年か侵略が行われていなければ、歴史はまた違っていたかもしれない。

かなりのボリューミーな内容で、終盤に行くにつれ、冒頭の疑問への答えが明確になっていくようで、途中はかなりきつかった。
だけど人間がどのように発展していったのか、地域の環境の差がどのように影響を及ぼすのかなど、とても濃い内容になっている。

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