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たかが世界の終わり / 時間の空白は家族の関係に影を落とす

病気になって、もうすぐ死んでしまう事実を知らせようと、長い間離れていた家族の元に帰省したルイ。
彼は家を飛び出してから一人で暮らし、12年もの間留守にしていた。
定期的に絵葉書を送っていたものの、それ以上の関わり合いはない。
彼は早めに病気のことを打ち明けて、早めに帰ろうと思っていた。
家族がどんな反応を見せるか、それだけが気がかりだった。

ルイにとって家族は遠い存在だった。
でもそれは、家族にとっても同じだった。
12年もの間姿を見せず帰ってこなっかた息子であり兄弟が、いきなり帰ってきたのだ。
彼らは久々の再会を喜び合うが、お互いにたどたどしく、どこかよそよそしい感じが否めない。
無理に明るく振舞おうとしている感じがして、それがかえって不許和音につながっているように感じる。
12年もの長い年月が経っているのだ。
子供の頃は一緒に暮らしていたとはいえ、長い間離れていれば、いろいろなものが変わってしまう。
家族という関係性ではあるものの、他人行儀感が漂っている。
母親はせわしなく、兄貴は何にでも批判的で怒りっぽい。
中身のない会話、うわべだけの会話が続き、この雰囲気が嫌だったから、ルイは家を飛び出したのかな、とも感じた。
ルイが家族に対して思っているように、家族も彼に対して思うところがあった。

ルイは 1人づつ家族と向き合う機会を得たことによって、家族が自分に対してどんなふうに感じているのか知ることとなる。
ルイは世界各地を訪れたさいに、その国のポストカードに短いメッセージを添えて家族に送っていた。
妹は、ルイから送られてくるポストカードを楽しみに待っていた。
と同時に、妹はルイに対して嫉妬心も抱いていた。
彼女はルイと同じように家を出たいと感じているが、なかなか決心がつかず、世界を自由に飛び回っているルイのことを恨めしく思っていた。
ルイにとって家族との唯一の繋がりだったが、妹の喜びと現実の辛さをつきつけるものだったらしい。

ルイは無口な男で、会話をするにも二言三言の単語で事足りていた。
母親はそんな口下手ですぐに会話が終わってしまうことに寂しさを感じ、家族とはいえ何も言ってくれない息子に苛立っていた。
知らないうちに住所も変更していて、せっかく手紙を出したのに、と家族と距離を置こうとしている息子に寂しさも感じている。
長男の兄貴は家族という重荷や責任から解放されたいと願っており、ルイが代わりに家族を代表するような立場になってほしいと思っていた。
どんなに離れていていてもルイのことを愛しているのは変わらない。
出迎えてくれた時は陽気な母親だったけれど、
2人きりで話す時はキリッとしていた。

兄貴との相性は最悪だった。
というか兄貴が嫌な奴すぎて、結婚した奥さんもかわいそうだった。
いつも怒りっぽくて批判的で攻撃的で、皮肉たっぷりの性格なのかはわからない。
それでもいろんな家族に噛み付いては吠え立てていた。
ルイは家族のことに興味関心がなかったのだろうか。
少なくとも兄貴はそう感じていた。
自分がどんな仕事につき、どんな生活を送っているのか、ルイは関心を持っていないのだろうと感じていた。
だからルイに何をいっても退屈を感じさせるだけで、人の話を楽しんで聞かないのではないか、と思い込んでいた。
ルイが自分に関心を持っていないのなら、自分もルイに関心を持つ必要もない、知る必要もないと決めつける。
そんな兄貴の思いが、ルイと 2人きりでドライブした際に、如実に現れたのではないだろうか、と感じる。

ルイは自分の殻に閉じこもって、家族に打ち明けようとしてこなかったのではないか。
自分のことを何も語ろうとせず、何を考えているかわからない。
家族にとってルイは不気味さを感じる対象だったのかもしれない。
だから 12年という長い月日が経って、いきなり顔を出したルイに、家族は困惑し、ぎこちなくなったのだろう。
ルイも家族も、お互いのことを知らなすぎたから、「恐怖」を感じていたのだろうと思う。

ルイは帰ってきた目的を話すつもりだった。
でもなかなかタイミングを見出せず、要点を切り出せずにいた。
そんな時に兄貴は、そろそろ約束の時間が近づいているから帰らないと、と切り出し、ルイを追い出そうとする。
母親や妹は、そんな兄貴の行動を批判し、せっかくの日曜日なのに全てお前のせいで幸せな時間が台なしだ! とまくしたてる。
兄貴は嫌な奴だったが、あえて嫌な役回りをしたのかもしれない。
兄貴はルイがいおうとしたことに気づいたのかもしれない。
幸せな時間だからこそ、死の宣告で台無しにするよりは、強引に帰らせることで、また次の機会が来ることを夢見させようと計ったのかもしれない。
真相はわからないけれど。

自分勝手に飛び出して、長い間顔も見せず、いきなりふらっと帰って来る。
家族にとっては身勝手な男だと思われていることを知り、ルイにとっては結構きつい里帰りのように感じた。
結局死ぬこともいえなかったけれど、それで良かったのかもしれない。

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