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レット・ゼム・オール・トーク / 友情を温め合うはずの船旅が一変

女流作家のアリスは、自作のフィクションの作品が受賞したことで、ぜひ授賞式に出た方がいいと、担当の編集者から勧められる。
アメリカに住む彼女は、授賞式のあるイギリスへ渡らなければならない。
彼女は飛行機に乗れないから、授賞式にはいけないとやんわり断るも、別に飛行機じゃなくてもいいじゃない、船でだっていけますよ、と半ば強引に勧められて、豪華なクルーズ船でイギリスへの船旅に出ることになった。
アリスは親族(たぶん孫)の青年タイラーと、50年以来の友人、スーザンとロバータを誘って、久々の親睦を温めようとする。
友人の女性たちが集まって、ガールズトークに花を咲かせる、のかと思いきや、意外にも腹の探り合いで、昔のような仲の良さは消えてしまっていたようだ。

アリスは担当者から次の作品をせっつかれているため、クルーズ船の中でも執筆活動を続けなければいけなかった。
久々の友人ともなかなか時間が取れないため、彼女は友人が何を求めているのか知りたがっていた。
特にアリスは、友人のロバータに何度もお茶を誘うも、毎回何かしらの理由をつけられて断られてしまう。
愛想のないロバータはなぜ旅行に同行したのか、その真意を測りかねていた。

ロバータはなぜアリスを避けるのか。
彼女はアリスに裏切られたとずっと思っており、彼女に謝罪と償いをして欲しいと感じていた。
ロバータは、自分の苦しく辛い現実に立たされていた頃、友人のアリスに悩みを相談していた。
その後アリスは小説家として本を出版した。
その小説に登場する人物も、状況も、自分が話した悩みの内容にほとんどが酷似していた。
ロバータは、自分の不幸をそのままネタに利用されたのではないか、と長年引っかかっていた。
というか確信していた。
アリスに問いただし真相を突き止めたかったが、本人を前にしてなかなか話を切り出せずにいた。

クルーズ船では、アリスとロバータの不仲が根底に流れつつも、さまざまな人間模様が描かれる。
アリスに知られずにこっそり同じ船に乗り合こんだ女性担当者。
そんな彼女に淡い恋心を抱く青年のタイラー。
同じクルーズ船に乗り合わせた売れっ子ミステリー作家。
その作家と仲良くなって、次回作のネタを話し合う中になったスーザン。
最後にはちゃっかり報酬をもらう約束までしている。
ロバータはアリスの誘いを断って、金持ちの男を捕まえようと男漁りに繰り出す。
ロバータとスーザンの中は睦じいようで、いつも一緒にいる。
アリスだけが蚊帳の外にいて、一人で過ごすことが多かった印象。

最も衝撃だったのは、終盤でアリスが亡くなってしまうこと。
船旅が終わり、イギリスの地を踏んで、授賞式までの間に泊まったホテルで、彼女は突然亡くなった。
前日にアリスは、小説の元ネタについてロバータと話し合い、結局アリスはロバータの人生をネタとして使っていた。
信頼し合っているからこそ許しを期待していたが、友人だと思っていた相手とは友情が消えていた。
その事実にショックを受けたのか、持病が牙を剥いたのか、突然の死をもって終わりを告げる。

アリスにとっては中途半端に悔いを残したまま旅立ってしまったように感じる。
小説を書き終わることもなく、授賞式に出ることもなく、生まれ育ったアメリカで死ねず、友情も失った。
なんだか可哀想なアリスだった。

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