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マリグナント / 彼女の中に封印していた存在が再び目を覚ます

ホラー映画として少し心づもりをして鑑賞したのに、思っていたほど怖いものではなく、逆にこれはホラー映画のはずでは? と忘れてしまうほどの華麗なるアクションが展開されること。
拘置所内の人を次々となぶり殺し、警察署内の警官を次々と刺し殺し、残酷なほどに人がバッタバッタと死んでいく、見事な殺陣を披露するところ。
予想とは全然違った内容になっていて、いい意味で期待を裏切られた、いい映画だった。
ストーリーも個人的にはよく練られているなと感じた。

幽霊が出るときには、だいたい電気の点滅があったりと、他のホラー映画にもありがちな設定で、ただならぬ何者かの気配を予見させている。
目には視えないなだけで、「何か」がそこにいる。
それは実体を伴わないものだから、生きている人間はただやられるしかない、というのがホラー映画ではありがち (と思っている)。
だけどこの映画はちゃんとした実体を持っているし、なんなら身体能力も高く、人を殺すことに長けていて、怪力で人の頭を踏み潰すこともできれば、素手で体を貫くこともできるという超人ぶり。
「悪魔」と呼ばれるその怪物の正体は一体何者なのか、真実が明かされるときの衝撃は、予想の斜め上を行った。

ガブリエルと呼ばれる「悪魔」は、30年前の昔に病院で大量の死者を出した。
医者からは「悪性腫瘍」と呼ばれた彼は、手術によって治療され、その存在は忘れ去られていた。
しかし 30年という月日が経って忘れた頃に、突如として姿を現し、腫瘍を取り除くための手術を行った、医者やその関係者に復讐を誓い、命を狩りに出る。
なぜガブリエルは今まで姿を現さなかったのに、30年経った今になって姿をあわらしたのか、がストーリーのキーポイントになるのではないかと思う。

冒頭の病院での殺戮シーンが、主人公のマディソンとどう関係あるのか。
なぜマディソンは、目の前で人が殺される場面に立ち会うようになったのか。
それはただの悪い夢なのか。
それとも超能力的な何かの力によって視えてしまうものなのか。
マディソン自身もその理由がわからなかったが、視聴者と同じように過去の出来事を知ることによって、ガブリエルがどこから来るのか、真相を一緒に知ることとなる。

マディソンは幼い頃に実の母親に捨てられ、施設で育てられる。
彼女は産まれた時から一つの体に 2人ぶんの人間が宿っており、珍しい奇形双生児の事例として、研究対象とされていた。
彼女自身の見た目は普通だったが、背中にもう一人、未熟で醜い男の幼児がくっついており、
互いの脳の領域を共有していた。
成長するにつれ男の奇形児は凶暴性を増し、マディソンや周りの人を危険にさらすようになる。
そして冒頭の殺戮事件が起こったことで、担当の医師たちは、奇形児の体をマディソンから剥ぎ取り、顔の部分を彼女の頭部に埋め込むことで封印し、マディソンもまた、里親に預けられ家族ができることで、双子の兄弟の存在を忘れていった。
その醜い奇形児こそ、「悪魔」と呼ばれたガブリエルだった。

そのまま 30年という時が経ったころ、マディソンは DV夫に暴力を振るわれたときの衝撃で後頭部に傷を負い、その衝撃で眠っていたはずのガブリエルが目を覚まし、マディソンの体を乗っ取ることで、自分を封印した当時に医者たちに復讐を果たし始めた、というわけだったのだ。
マディソンの後頭部にもう一つの醜い顔がある。
その絵面は衝撃的で、同時にハリー・ポッターのヴォルデモートを彷彿とさせる。
彼もまた人の後頭部に宿っていた時期がある。

なぜマディソンの頭から出血が続くのか、それはガブリエルが覚醒したときに後頭部が開いて顔を出したから、というのがわかってスッキリした。
背中を前にして後ろ向きに歩き、不自由さを感じさせないアクションは見ごたえがある。
まさかホラー映画でアクションを見れるとは思いもしなかった。

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