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幾千の夜、昨日の月 / 旅先の夜空で思いを馳せる

前回『いつも旅のなか』に引き続いて、角田光代さんの旅のエッセイを読んだ。
今回は「夜」にスポットを当てた、旅のエッセイ。
夜にも、いろんな表情がある。
深夜列車の車窓からみる夜の情景だったり、砂漠の真ん中で、ばかでかい大きな月を間近でみたり、屋台が並び、人ごみであふれんばかりにガヤガヤしてて、本能が感じ取る危険信号を感じとった、若き日の著者。
他にもいろんな国で、いろんな体験の中で遭遇した、数かぎりない「夜」をまとめた今作。
その国ごとの情景をすぐ目の前にあるように感じられ、そこで湧き上がる感情に共感を覚え、真っ暗な夜の空を見上げながら、人生について悟る。
ああ「夜」とはこんなにも美しいもので、こんなにも危険が潜んでいて、こんなにも自分と向き合わされるんだと。
夜の闇夜に潜む魔性を感じとるような、だけどそれをじっと見据えなきゃならない。
夜はある意味、人間を大きくしてくれるようなそんな力があるのではないかと思わずにはいられない。

夜は危険がいっぱい潜んでいる。
特に外国では、夜間での外出は控えるように、よくガイドブックなんかでも注意喚起されている。
比較的治安がいいと言われてる国や地域や場所でも、夜は人間の魔性が解き放たれてしまうかのようで、昼間の穏やかさとはうってかわって、漆黒の闇が、動物としての本能を呼び覚ますのかもしれない。
例に漏れずこの著者も、できれば夜間に街をうろつくようなことはしたくない、と述べている。
それでもやはり夜は夜で、昼間とは違った顔をのぞかせ、その違いもまた、旅することの醍醐味の一つであることは変わりない。
夜だからこそ、夜にしか、見れない景色もあるはずだ。

夜には不思議な雰囲気がある。
光、という照らし出してくれるものが少ないと、人底知れぬ不安に襲われる時がある。
その不安をかき消すために、街にはネオンが溢れ、コンビニではこうこうと光が灯り、見なくていいものを見ないように、不安にさいなまされないように、昼をいつまでもいつまでも延長しているかのようだ。
漆黒の闇夜を見つめながら、自分という存在を振り返る。
しんとした静けさの中で、自分の不安なものをみつめ、人生について考える。
夜の静けさは、感覚を研ぎ澄ます絶好の機会だ。
夜だからこそ、生まれるものがある。
夜だからこそ、気づけることがある。
生活リズムの一つとしてだけでなく、人を大きくさせるものが、夜にはあるように感じる。

旅先の出来事だけでなく、人生のことも考えさせられるような、思いを馳せる「夜」を集めたエッセイだった。

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