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オリエント急行殺人事件 / 過去の怨恨を晴らすために仕組まれた殺人

顔に傷があっていかにも極悪人です、っていう感じの人から、もしかしたら殺されるかもしれないから、目的地に到着するまで護衛してくれないか、と頼まれるポアロ。
でもポアロは「あなたみたいな悪に染まった人の依頼は受けません」と断固拒否する。
その後依頼してきた当の人物は列車内で殺されてしまうけれど、この人物、ただの怪しい美術商では済まされない、本当に極悪人物だった。
過去に殺人を犯し、多くの人に悲しみと傷跡を残した殺人犯。
今回はその人物を中心に、多くの人物が登場する。
ミステリーものとかの小説を読んだりするのも好きなんだけど、この手のものは登場人物が多くて、把握するのに大変疲れる。
誰と誰が繋がっていて、どういう関係性で、とか。
話を追っているうちになんとなくわかってくる人間ってすごいなぁ、っていつも思いながら楽しんでます。

過去の事件が引き金に

列車内で起こった殺人事件について、容疑者と一人ひとり事情聴取を行なっている時に、途中で出てくる過去の「アームストロング事件」。
少佐が殺されたとかいう未解決の事件がふつふつと沸き起こり、これが列車とどういう関係があるんだろう、と疑問に感じたりもしたのだが、このアームストロング事件が今回の事件の引き金になっている、ということにしばらくして合点がいった。
誰が誰だかわからなくなっていて名前も覚えられないので、誰のことを言っているのか大変だったが、なるほどアームストロングを殺したのが、ポアロに護衛の依頼をしてきた例の美術商の男なのか。
で、その過去の事件が乗客の誰かと関わりがある?
でも彼を殺したのは執事でも車掌でもないんでしょ?
他の人にもアリバイがあるみたいだし、そもそも例の美術商の男のことを知らないみたいだし。

誰もが怪しいけれど、誰もが怪しくない。
そんな状況に、世界一の名探偵ポアロもお手上げ状態のようだった。
それもそのはず、犯人は単独犯ではなくて複数犯だったからだ。
それも乗客全員が殺人に加担していた。
そんな結末ってある?
今まで観てきたり読んできたミステリーもので、容疑者が全員犯人だった、という結末は初めてだった。
ぼくの数少ない経験だけれど。
しかも車掌を含めた全員がアームストロング事件の被害者で、事件を止められなかったり、責任を負わされた親族だったり、冤罪で自殺した女性の身内だったりと、さまざまな立場で深く傷を負った者たちだった。
ある一人の立案者が関係者全員を集めて同じ列車に乗り合わせ、それぞれ全くの他人同士を演じながら、殺害という目的のために集まった人たち。
この殺人は入念に組まれた計画的な犯行だったのだ。
怒りや悲しみを乗せた急行列車。

異例の決断

ポアロは全員の関係性を鋭く見抜いた。
全員が殺害に加担したから、全員を殺人罪で警察に引き渡さなければいけない。
本来のポアロだったらそうするだろう。
善と悪を明確に分け、悪は法のもとで裁かれる必要があると思っている。
でも今回は複雑な事情を抱えている。
もちろんどんな人であっても人を殺すことは許されない。
でも、こんなにも多くの人を巻き込み、こんなにも多くの人に悲しみを与え、怒りを誘った人物の殺人事件。
善と悪の天秤で簡単に測れないと悟ったポアロは、乗客の罪を見逃し、警察には黙っておくといって去っていく。
これがいわゆるアガサ・クリスティーというやつか!
これは確かに代表的作品と言っても過言ではないわ、と感じた。
こういう奇抜な結末はそうそうないだろうと思う。

次回作の『ナイル川殺人事件』でもそうだったけど、命が狙われているから護衛してほしい、と依頼をしてきた人が必ず殺されているので、もしかしてポアロシリーズはそういう感じで始まるの? なんて思ってしまった。
原作を一冊も読んだことがないので、いずれ読まなければ、と思った。

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