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ドント・ブリーズ / 生きてこの家から脱出しろ!

息を殺せ、さもなくば…という感じですが、非常に怖い。
怖い、というかすごくドキドキします。
サスペンス色が強いホラー映画。
見つかってはいけないという静寂の重々しさが感じられる作品です。

ロッキー、アレックス、マネーの 3人は、家屋に侵入し強盗を働く若い青年たちの窃盗犯。
アレックスの父親はセキュリティ会社に勤めており、警報システムを解除できるリモコンを持っている彼は、父親の警報機を設置している家をターゲットにして空き巣を働いている。
アレックスには自分の中にルールを守っていて、1万ドル以下に被害を抑えようとしている。
1万ドルを越えると罪が重くなるため、そのギリギリのラインを超えないように注意をしている。
見た感じ冷静で計算高いような顔をしています。
彼らは決して現金には手をつけずに、ブランド物などを物色し、ある程度度をわきまえている。
それぞれに思惑を持っていて、ロッキーという女性は家庭環境が悪く、幼い妹と一緒に巻き上げた金を貯めて家出しようと企んでいる。
ロッキーに恋心を抱いているアレックスは、彼女についていきたい反面、父親のことを気にかけてまだ迷っているように見える。
マネーは、盲目の退役軍人が事故で娘を亡くし、多額の賠償金を得たとの情報を手に入れる。
アレックスは現金に手をつけることと、重罪に手を染めることを良しとしなかったけれども、ロッキーの懇願についに折れ、その家に押し入ることを決める。

相手は目が見えないという点で、状況としてはかなり有利に働くだろうと予測する。
元軍人といえど目が見えなければどうってことない。
しかも夜寝ている時に侵入して睡眠ガスを撒いておけば、大きな音を立ててもまず起きることはないだろうと高を括るわけです。
しかしこの読みが彼らには裏目に出てしまった。
しかも盲目の男性は獰猛な犬を飼っているのです。
マネーは結構短絡的で、彼の軽はずみな行動によって盲目の男性が目覚めてしまう。
男性は探り探り侵入者の存在を確かめようとします。
息を殺して存在を押し殺しておけばよかったものの、マネーは男性を制圧できると踏んで言葉を発してしまう。
自分の存在を明かしてしまったのです。
目が見えないということは、それ以外の感覚から周りの情報を判断するしかありません。
その他の聴覚や嗅覚の感覚が研ぎ澄ます必要がありますし、元軍人なら生活するためにも鍛えている。
そこに安易な考えで存在を明かしてしまった、そして彼の存在感に気圧されたマネーは冷静な判断ができず、結果男性に制圧されてしまい、自分の銃で殺されてしまうのです。

ここから一気に緊迫感が押し寄せてきます。
家の中に取り残されたロッキーと、一度は降りたアレックスも、彼女を助けるために舞い戻ります。
ここから必死の逃走劇が繰り広げられるわけなんですが、これがもうかなりドキドキします。
体格的に圧倒的に強い男性に悟られることなく、彼の感覚をかいくぐり出口に向かってひた走る。
焦りと冷静さと恐怖と勇敢さのせめぎ合いが、非常によく表情に表れていました。
目の前で人が殺され、見つかってしまったら同じように殺されてしまう。
この身の危険を感じてパニックになってもおかしくないのに、しかし人間は生存本能が優って、どうにか声を出さないように必死で口を押さえるんです。
このギリギリの精神の強さというものがよく表現されていると感じました。

ロッキーは極限の状況に置かれてもお金を持って逃げることを優先し、自分の命と同じぐらいにお金を持って逃げようとする。
それはその先に妹と一緒に家を出て 2人で生きていくという強い思いがあったからこそこの恐怖を乗り越えることができた。
それだけ未来というものに、妹の約束を大切にしていた、逃げ延びる目的の強さというものを持っていたから生き残ることができた。
まぁかなりとってつけたような深読みですが。

侵入された側の視点からすれば、深夜に犬と警報機をかいくぐった、何人で忍び込んだか分からない敵を制圧していかなければいけません。
銃で脅してきた相手を倒し、侵入者を排除したと思った束の間、靴の匂いか嗅ぎつけて、別の侵入者がいることを知ってしまう。
しかも大事に隠していた大金も盗まれてしまった。
これは大変なことなのです。
もう万事休すと思った矢先、地下室で自分の秘密を知られてしまった、と同時に逃すわけにはいかない。
盲目の男性は非常に冷徹で残酷です。
彼は娘を亡くした段階で神への存在を否定し、この無情な世界に怒りを募らせています。
事故を起こした犯人 (女性) は保釈金を払って自由の身となり、この世の不条理さに嘆いた彼は自ら手を下そうとする。
男性は彼女を復讐として殺すのではなく、失った娘を取り戻すべく、彼女に自分の DNAを植え付け、出産させようとする、かなり特殊な性癖を持っていたのです。

生存本能をむき出しにした、かなり見応えのある、ハラハラドキドキした映画でした。
これ撮影はかなりトラウマものになりそう。

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