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人間失格 / 人の道を外れ、堕落していった人生

「恥の多い人生を送ってきました」という一文が印象的なように、
作者の半生をつづった日記。
太宰治がそういう人生を送ってきたのか、それとも物語の中だけの話なのか、詳しいことはわからないけれど、ただこの日記を書いた作者は、生きるのがしんどかったんだなあ、という思いがふつふつと湧いた。
人の顔色を伺い、道化を演じて笑いを誘うことで心の弱さを隠し、人を怖がり、孤独でいることに向き合えず、自分がどんなことを望んでいるのかもわからず、そんな浅はかで深みのない人間であることこと見破られたくない、とずっとビクビクし続けた人生、のような印象を受ける。

「自分」がない人生

学生の頃は道化を演じることが通じていたけれど、大学になってからは今までと違って、道化を演じることが逆に白々しくなる。
酒やタバコや売春婦など人間を堕落させるものに興じ、逆にそれが居心地よく、どんどん深みにはまっていく。
真っ当な人間のように仕事をするでもなく、自立するでもなく、同情をかった売春婦の元に入り浸り、ヒモ生活を送る。
自分と同じように人生に絶望しているはずだった彼女も、小さな幸せに喜びを感じ、「あぁやはり自分とは世界が違うんだな。生きようとしているのか」と悟っては、また似たような孤独者を求めてさ迷う。

学校にもいかず金を食いつぶし、人生に絶望した彼は 2回も自殺を図る。
親からは縁を切られるも、数人の友人から面倒を見てもらうことでなんとか生きながらえる。
それでもその友人は信頼関係でつながっているわけではなく、都合のいいように利用されていただけ。
自分の望みもなく、何をしたいかもわからず、ただ高揚感を得たいがためだけに酒や薬や女に手を出し、それらを得るためにだけに安っぽい漫画を描いては、お金は酒や薬に消えていく。

満たされない孤独感

人間の社会に馴染めなかった男。
何もかもが平凡で、どんな特徴もない男。
人に嫌われたくない、一人でいるのが寂しい、だから道化となることで人を笑わし、笑ってくれることで生きていることを実感できる。
世間からはじき出されたはみ出し者に絆を求め、同じを孤独を漂わせた者(売春婦)と仲睦まじくなり、彼女たちから女を知り、扱い方を学ぶ。
それは己を満足させるためには便利だけれど、心を満たしてくれるものにはならなかった。

人間の道を外れ、怠惰にふけり、欲望を満たすことに快感を覚えた男は、27歳という若さで白髪が増え、見た目が 40代の老人になってしまう。
自分の愚かしさからくる自業自得であるものの、常に満たされない心の虚無が彼を蝕み、堕ちてしまったのだろう。
ただこの男は孤独で、人に受け入れられたかった。
その思いが強すぎて、人の顔色をうかがって生きるようになったのだろう。
どこか寂しい人間だったのかもしれない。
それを酒や薬や売春婦で、心の虚しさを満たしたのではと思う。
人のことが気になりすぎて、自分のことに目が向かなかった。
人がこう動くから、自分もこう動く、というふうに。
自分はどうしたいのか、どう行きたいのか、主体性があったら、彼の人生はもっと違っていただろう。
とはいえ、人の性質は簡単には変わらないだろう。
だからこそ行きていくのはしんどいことなのだ。

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