nomadland

ノマドランド / 雄大な自然の中でたくましく生きる姿

「ノマド」とは「遊牧民」という意味があるらしく、その名の通り一定の場所に定住せずに、移動しながら暮らす人のことを指す。
最近ではデジタルノマドといわれる人たちが多くいて、パソコン 1台あればどこでも仕事ができる、働く場所も住む場所も自由に選べる、ということで、ノマド生活に憧れている人も多いみたい。
とかくいうぼくも、ノマド生活に憧れている。
デジタルノマドの人は、現状どのように住んでいるか知らないが、ホテルなどまあまあきちんとしたところで暮らしているのだろう。
この映画はそんな華やかなデジタルノマドではなく、雄大な自然の中で、見渡す限り砂漠が続く厳しい自然の中で、車で生活し、季節によって仕事先を変え、その日暮らしを堪能しながら、たくましく生きている。
現代の「ノマド」生活の姿がそこにあった。

エンパイアという石油企業の業績が悪化して倒産することになり、そこで働いていた人たち、社宅に住んでいた人たちは、全員立ち退きを強制された。
夫ともに働いていたファーンは、ノマドとして暮らし始める。
夫は病気で先立たれ、独り身となったファーン。
彼女は愛車のバンに乗り、夫との思い出のある土地を離れることができず、その土地をバンで放浪しながら生活している。

ノマドライフを始めた人たちは、様々な思いを胸に生活を堪能している。
ある人は自由な暮らしを夢見て、実際に旅に出た人。
ある人は長時間労働に疲れ、人生の大事な時間を無駄に過ごしていると感じ、人生の主導権を取り返すため、自由に憧れて旅に出た人。
またファーンのように、成り行きでノマドになった人など、人の数だけ理由はある。
自由な暮らしは魅力的なものだ。
今日はどこにいくか、何をするか、誰にも邪魔されず、自分のペースで暮らしていける。
時には同じノマドの人たちと集まって交流し、お互い助け合いながら、また何処かで会えることを楽しみに、それぞれ旅立っていく。
出会いと別れを繰り返しながら、自分の道を進んでいく。

そんな自由気ままなノマドの暮らしにも、影の部分はある。
定住している人とは違い、移動しながら暮らす彼らも、働かなければ生きていけない。
車の維持費、燃料代、食費などなど、最低限のお金は必要になる。
彼らは短期的に仕事に就き、お金を貯めてはまた旅に出る。
安定して長期的に働くことができず、移動先で常に働ける所を探さなければならない。
清掃員、工場、飲食や重労働など、働き口を選んではいられない。
その場限りの収入で、贅沢をしてはいられない。

作中のノマド暮らしの人々は、そのほとんどが高齢者だった。
これから人生 100年時代に突入する。
彼らの姿は、将来の自分たちの姿になるかもしれない。
定年は引き上げられ、高齢になっても働き続ける必要があるだろう。
人口は減少し、人々は都心へと集まるかも、と予測されている。
そうなれば都心の住宅は値上がりし、仕事も競争率が激しくなる。
お金が払えない者、仕事にありつけない者は都心に住むことができず、荒廃した土地で暮らすことになるかもしれない。
もしくは都心に出稼ぎに行くために車を所持し、手っ取り早く車の中で生活しようとする人が現れるかもしれない。
作中のノマドのように。
現代のノマドの生活は、遠い国の世界の話ではない。
将来自分に起こったとしても不思議はない。
そうなった時に、彼らのようにたくましく生きていけるだろうか。
狭い車の中でご飯を食べ、毛布をかぶって寒さを耐え忍び、駐車できるところを探し、自分でメンテナンスする。

ノマドは自由だ。自分の好きな生き方ができる。
大自然を楽しみ、行きたいところに行き、やりたいことをやる。
仕事も生活も人間関係も、全て自分でコントロールすることができる。
魅力的な生活だけど、自由を選択する代わりに、何かを捨てなければならない。
現代のノマドは、将来の自分の姿かもしれない。

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