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レッド・ドラゴン / 神になることで自身の価値を証明する

ハンニバルシリーズの第 3弾であり、『羊たちの沈黙』よりも前の前日譚。
なぜハンニバル・レクターは牢獄に入ることになったのかが、映画の冒頭で語られる。
当時、犯罪精神鑑定の顧問として、警察にアドバイスを提供していたハンニバル。
とある殺人事件を追っていた捜査官グレアムは、たぐい稀なる想像力を駆使して、犯人像に迫ろうとしていた。
グレアムは、殺人犯が人体の一部を「食べていた」ことを突き止め、その事実をハンニバルに打ち明ける。
しかしグレアムが追っていたその犯人こそ、協力を仰いでいたハンニバルその人であった。
ハンニバルはいずれ正体を突き止められることを恐れ、グレアムを殺そうとするが返り討ちにされてしまう。
このことがきっかけとなり、ハンニバルは「噛みつき魔」として世間に知れ渡ったのだった。

ハンニバルのすぐそばまで迫ったグレアム捜査官。
その鋭い観察眼と柔軟な想像力は、ハンニバルをも恐れさせた。
しかし彼はハンニバルの逮捕後、捜査官を辞職し、僻地で家族と共に過ごしていた。
しかし彼のずば抜けた能力は警察も欲しており、世間を賑わせている連続一家殺害事件の調査に協力してほしいと、彼のもとを訪れる。
グレアムはその能力で多くの犯人を捕まえてきたが、自分一人だけの功績ではなかった。
彼にはハンニバルという、犯罪心理に秀でた顧問のアドバイスがあったからこそできたのだ。
グレアムは、今回もハンニバルの意見を聞く必要があるとして、彼に協力を仰ぐため、刑務所へと訪れる。

ハンニバルのもとを訪れたグレアムは、相当に緊張していたらしい。
面会が終わり、ホッと一息ついた時のシーンで、脇汗をびっしょりかいていた。
かなり目立つほど濡れていたので、グレアムの緊張感を伝えるために、あえてその場面を映したに違いない。
いくら牢獄に囚われているとはいえ、凶悪な殺人犯であり、顔なじみであり、知人であり、久々に面会する相手だ。
人間心理にも秀でているので、動揺を見せないようにするのに苦労したのだろう。

殺人犯は幼いころから祖母に罵られ、虐待を受けていた。
彼はその過去がトラウマとなって、自分を貶めた女性に対して、復讐心を抱くようになったのかもしれない。
自分を無下に扱った祖母 = 女性に自分を認めさせたい、女性を支配しひれ伏させ、自分を崇高な存在として認められたい、「レッド・ドラゴン」のような神として君臨することで、自分の価値を証明したい、と思ったのではないか。
そんな意思が彼の中に別の人格として形成され、彼を大胆な行動に移させたのではないだろうか。

彼は職場の目の見えない女性に惹かれていた。
見た目で判断せず、人間性を見てくれる女性の存在が、彼の心を癒し、内なる凶暴性が抑えられたのかもしれない。
彼は女性に認められたかった。
女性に認められることで、自分の存在に価値を見出すことができた。
彼は被害者の目にガラス片をかぶせ、偉大な姿が目に映っていることを間接的に見ることで、満足感を覚えていたのではないか。
だが、直接触れ合い、慕ってくる女性が現れたことで、彼の欲求が満たされる。
よくわからないけど、そんな感じなのかなあ、なんて感じた。

背中に神の姿を彫ったこと、神を自身の内に宿らせるために絵を喰らったこと。
神の力を授かることで、無敵になれる。
トラウマを持っている者は、何かしらの力にすがりたいのかもしれない。
偉大な存在として崇拝されることで、自身の価値を認めさせるために。

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