reminiscence

レミニセンス / 失った彼女の行方を捜すため記憶を遡る

PVを観た感じだと、人の記憶の中に入っていって、ある女性の手がかりを探していく、というような内容だと思っていた。
『インセプション』のように、人の過去の記憶に入り込み、記憶の中の世界で一人の女性を見つけ出す。
機械は記憶に潜り込むためのもので、何度も同じ場所をあてどもなく探し回り、やがてループにはまり込んでしまう。
ループから抜け出し、彼女の正体と居場所を突き止めることができるのか、といった内容だと思っていたんだけど、全然違っていた。

幸せな記憶を呼び覚ます

人の記憶に入り込むわけではなくて、人の記憶を閲覧しているだけだった。
人に記憶は普通、思い出している本人しか見えないもの。
でも、未来の技術では、頭に装置を取り付けることで、記憶の映像を 3Dのように映し出すことができる。
他人に映像を見られるのはなんだか恥ずかしい気もするが、警察などの捜査には有用になっていくのだろう。

主人公のバクスターは人の記憶を思い出してあげることを生業にしていた。
彼は声の導きによって人を催眠状態に誘い、その人が幸せだった時の記憶を思い出させていた。
人の記憶とは曖昧なもので、時間が経つほどに忘れていってしまう。
しかし、脳の奥深く、潜在能力の中には記憶が残り続けるのだろう。
忘れてしまった記憶を催眠状態によって思い出させ、幸せだったあの頃の記憶を蘇らせていた。
現実が不幸であればあるほど、人は幸せだったあの頃の思い出に浸りたくなってくるもの。
現実を忘れるために過去にしがみつくことは、ある意味で依存症のようになってしまう危険性もはらんでいる。

姿を消した彼女の真相

彼女はどうしていなくなってしまったのか。
どうして何も言わずに姿を消してしまったのか。
あんなにお互いを想い合えていたはずなのに。
これからもずっと関係が続いていって、幸せな生活を送れると思っていたのに。
それなのに、彼女は突然姿を消してしまった。
バクスターはその理由が知りたかった。
過去の記憶を辿っていけば、その理由がわかるかもしれない。
しかし記憶の中にとどまり続ければ、現実の世界に戻ってこられなくなるかもしれない。
彼はそんな危険を承知の上で、記憶の中を探り、彼女が消える理由を探していた。
バクスターがメイと出会ったのは、彼の元に記憶を辿って探し物をして欲しいと依頼するために訪れたのがきっかけだった。
その後バクスターはメイに惹かれるようになり、やがて 2人は恋仲へと進展する。
しかし、或る日突然姿を消した彼女。
バクスターはメイが消えた真相を探っていくうちに、彼女の過去を知ることになる。

メイは昔、別の街で歌い手として活動していた。
その街で薬物の売人と接触した彼女は、依存性の高い薬物を摂取させられたことにより、当然、薬物依存症になってしまう。
メイは薬を求めるために、売人から薬物と金を横領し、その街から抜け出した。
だが、依存症に苦しんだ彼女はある人物と出会い、立ち直ることができた。
メイは再起を図るためにバクスターのいる街へとやってきたのだった。
しかし、彼女の元にかつて売人の手下だった男が現れ、金のためにある仕事を引き受けることになる。
それが、バクスターの元に近づき、ある人物の記憶を保存したデータを盗み出すことだった。

バクスターがメイと近づきになるのは、すべて最初から仕組まれていたことだったのだ。
裏で手を引いていた男は、ある金持ちから依頼され、相続に邪魔な人物を特定し、排除することだった。
その人物はバクスターの元で記憶を閲覧しており、その過去の記憶も処分する必要があった。
そのためにバクスターの過去を調べ、メイを近づけさせ、記憶のデータを盗み出す隙を狙っていた。
しかし、メイはバクスターに徐々に惹かれていったことで、真っ当に生きることを決断し、犯罪から手を引こうと考えていたのだった。

富裕層の思惑

街のほとんどの土地を買い占めていた地主は、正妻との間に息子がいたが、愛人との間にも子供をもうけていた。
地主は病気に臥せっており、いつ亡くなってもおかしくない状況だった。
地主の息子は、遺産相続で、愛人の息子にも分与することを嫌がっていたので、裏の人間に愛人とその子供を殺すように依頼していた。
その依頼先の男がメイとつながっていたので、彼女は犯罪に手を貸すことになってしまったのだった。

金持ちは自分の身を守ることしか考えていない。
地球温暖化によって海面の水位は上昇し、地形の低い都市や街は水没し、そのほかの地域でも浸水は激しくなっている。
日中の気温は上昇し、人々は気温の下がる夜に活動するようになり、昼夜が逆転した生活を送るようになった。
水没によって亡くなった人々も多く、人の住む場所は限られてしまう。
その一方で金持ちたちは、街の周りに巨大なダムを建造し、水没の被害から身を守っていた。
金があることで身の安全を図り、金があることで邪魔な存在を消す。
人間の格差はどこまでいっても無くなることはないのだろう。

結果、バクスターはメイを失った悲しみに暮れ、過去の幸せだった記憶をループすることによって現実世界から目を背け、過去にしがみつくことを選んでしまう。
未来に希望を持って現状を変えようとするのか、それとも過去に生きることを選ぶのか。
それだけ恋の力は人の運命を左右するほどの力を秘めているんだなとしみじみ感じる。

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