spiderhead

スパイダーヘッド / 人体実験に隠された本当の目的

本土から離れた小島に建設された、とある研究施設。
そこでは薬を使った人体実験が行われ、薬の効果が検証されていた。
複数の薬が開発され、割り振られた番号ごとに効果の内容が違ってくる。
ある薬は愉快な気分にさせ、ある薬はお互いをロマンティックな気分に、もっと言えば投与されてから瞬時にセックスしたくなるような気分にさせる。
またある薬は言語能力を発達させ、語彙力や表現力を高めたり、別の薬は見るもの全てが美しく見えるようなものまである。
まさに人間の気分を操る「麻薬」もしくは「媚薬」と言える。
これらの薬は、脊髄に固定された機械にセットすることで、スマホで遠隔操作で注入されることにより、脳に直接刺激が行き、気分を変化させるような仕組みになっている。
スティーブという研究者は、人の気分を変化させるこれらの新薬の開発・研究を行なっており、上司からの命令で人体実験を行っていると説明している。表向きは。
実のところ、スティーブは新薬を世に送り出すための会社を起こしており、全て自分の意思で人体実験を行っていた。
彼が実験台に選んだ人たちは、犯罪者だった。
本土から離れた小島に建設された建物は、一風変わった刑務所だったのだ。
その刑務所に収容された囚人たちは、何不自由ない暮らしを提供されていた。
食事は出るし、自由時間もあるし、施設はクリーンで広々としており、犯罪者同士の諍いもない。
ある程度自由が確保されている代わりに、彼らは新薬の人体実験の被験者となっていた。

人を意のままに操る薬

愛情を感じる薬、恐怖を感じる薬、美しさ、愉快、怯え。
いろんな種類の薬の効果を試していたスティーブだったが、彼にはもっと別の思惑を隠していた。
話の途中で出てくる「B-6」という薬。これは赤色をしている薬で、これこそスティーブの本当の目的だった。
そのほかの愛情だったり恐怖だったりを感じる薬は、ただの目くらましに過ぎなかった。
スティーブが本当に試したかった薬「B-6」。
これは投与された人は、なんでも言うことを聞く、という代物だった。
この薬が完成すれば、愛情や恐怖などの強い感情を超越して、人を操ることができる。
スティーブは、この薬が広まれば、人は無駄な争いをしなくて済む、というような理想を持っていた。確か。
彼は感情を操る薬を投与しながら、「従順」が感情を上回れば、人をコントロールすることができる。
「B-6」を完成させるために、その他もろもろの薬を実験していたのだった。
しかし、「B-6」は感情を超えることは結局できず、未完成のままになってしまう。

奪われる自由意志

薬を投与される囚人たちは、薬を投与してもいいかどうか、実験開始時に承認を求められていた。
もし実験をしたくないなら否認することもできる。
研究者と被験者の間に信頼関係を築いているからこそ、実験に協力的になる。
無理強いをさせないからこそ、自分の意思で参加するか決定することができる。
人としての意思を尊重しながら行われているんだなと思っていたけど、本当は従順さを促す「B-6」の薬が密かに投与されていたことで、被験者はスティーブに促されるまま「承認」していたのだった。
自分の意思で決めていたはずが、実は薬の効果で受け入れていただけだった、というところがザワザワっと感じる。
最初は隔離施設で過ごしながら治験するために集まっていたのかと思っっていたけれど、実は一風変わった刑務所で、被験者は囚人だった、というところから怪しくなってくる。

従順さを促す「B-6」は人間の平和のために開発していたようだが、必ずしも平和になるとは言えない。
むしろ、人を操れるからこそテロ行為が蔓延することにもなるし、政治や戦争を引き起こしやすくもなる。
人を操る薬が悪者の手に渡れば、世界は平和になるどころか地獄と化してしまうだろう。
しかし、囚人たちのように、いつ「B-6」が投与されたかわからない状況になれば、ただ従っているだけなのか、自由意志で決めたことなのか、自分で判断できなくなる未来がやって来るのは恐ろしい。

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