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ボーン・スプレマシー / 暗殺者としての生き方を清算する旅へ

前作では、標的の暗殺任務に失敗した CIAのボーンは、失敗した責任と、CIAが暗殺事件に関わっていることを悟られないために、組織の上層部から命を狙われていた。
暗殺の現場から逃走するときに受けたダメージにより、ボーンは記憶喪失に陥っていた。
命をつけ狙う的から逃れるために、金と引き換えに逃亡の手伝いをさせた行きずりの女性と出会う。
今作では、マリーと名乗る彼女と恋人関係に発展していたようだが、残念ながら幸せな日々はそう長くは続かなかった。
CIAの目のつかないように地区の裏側へ逃げていたのに、ついに見つかってしまったボーンは命を狙われてしまい、マリーはその渦中に巻き込まれ、命を落としてしまう。
愛する者を亡くした痛みは深いけれど、悲しみに暮れている暇はなく、犯人から逃れるためにすぐさま行動に出る。

ボーンはずっと悪夢にうなされていた。
それは過去の記憶に埋もれていて、前作から記憶が戻ってからの
影響のせいだったかもしれないが。
夢に出てくる「ベルリン」という場所を手掛かりに、その記憶の真相を見つけるべく、ドイツへと向かう。
彼は自分の知らないうちに 2人の人間を殺害したことにされていた。
何も知らない CIA支部の人間は、現場の証拠からボーンが犯人だと目星をつける。
しかしこれは、自分の立場を守るためにボーンに罪をなすりつけた者によって仕組まれた罠だった。
ボーンは優秀な暗殺者でありながら、優秀であるがゆえに、目の上のたんこぶだったのかもしれない。
ボーンはあえて CIAの目につく行動をとり、指揮者をあぶり出す。

ボーンを罪に着せた人物は、同じ組織の上層部の人間だった。
彼は、前作で厄介な部下を殺していた上官だったが、今回もその手をさらに血で染めていく。
亡くなった捜査官が関わっていた事件には、ある裏取引に関する情報が含まれていた。
その情報が公になってはまずいと危惧した CIAの上官は、そのファイルを奪還するためにロシアの暗殺者を雇って殺し、人殺しの罪をボーンに着せた上で殺して、邪魔な存在に一気にカタをつけようと企んでいたのだ。
しかしそんな卑しい者の企ての通りにいくわけもなく、ボーンはするすると相手の警戒網をすり抜けて、犯人の真相を暴き出し、自身の潔白を証明する。

CIAという国家機関に訓練されて最強となった暗殺者も、都合が悪くなれば上層部の駒として処分される。
飼い犬に手を噛まれることを恐れる上層部は、強くなりすぎた暗殺者が裏切る前に処分しようとするものなのか。
しかしそんな態度がさらに彼らを警戒させ、ますます自分の力で生き抜いていこうとする独立心を煽るのではないか、という気がしてくる。
暗殺者は常に自分の意思で動き、常に最善の手を考える。
彼らを育て、指示を与える側の人間は、彼らの行動や考えが読めると思って先回りしようと目論む。
しかしどこをどう動けばいいのか訓練と経験を積んだ者には、どんなに机上で頭をひねっても太刀打ちできないだろう。

いつも夢でうなされていたボーンの過去は、彼の最初の暗殺の任務だった。
身に覚えのない殺人の容疑をかけられた今回の事件によって、当時の記憶が徐々に明らかになっていく。
その任務によって殺された 2人の人間には、幼い子供がいた。
彼は今になってその被害者の子供と対峙し、自分が殺したのだ、と本当の事実を伝える。
ボーンはもはや CIAに飼われた暗殺者ではなく、一人の意思のある人間として生きていく決意が込められていたのだろう。
任務に失敗したことによって組織から殺されそうになり、子供がいるターゲットに同情を感じるようになった彼は、暗殺者としての生き方ができなくなったのかもしれない。

この手のプロフェッショナルな人物の作品を観ると、決まって「何かに秀でることは自分の身を助けるんだな」と感じてしまう。
会社や組織にいたっていつまでも守ってくれるわけではない。
不要になったらすぐに捨てられてしまう。
そうなったとしても、自分で生きていける力を持っていれば、逆境に立たされても打つ手をとることができる。
そんな力強い人間にならないといけないな、としみじみ感じる。

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