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透明人間 / 見えない相手に対峙する恐怖

透明人間はどういう原理で透明になるのか、どういうふうに表現するのか、非常に気になるところじゃないだろうか?
一度透明になってしまえば、元に戻れないのか?
身体だけが透明になってしまったら、身につけている洋服などはどう処理するのか?
基本的に透明人間は全裸なのか?
そうすると身を守るものがないから、冬など寒い季節は透明人間にとって動き回れないんじゃないか?
など、透明人間への想像は尽きることがない。
邦題としてそのまんまな『透明人間』。
どのような仕組みの透明人間が出てくるのかと思ったが、最新テクノロジーで作られた光学スーツを着ることによって、光の屈折角度なんかを調節することによって、表面を透過させ、透明になっているように見せかける。
詳細な技術の解説は専門家に任せるとして、スーツを着ることによって、自由に透明になることができるのであれば、これはもう使うしかないだろう、という気になる。

透明人間といえば、どちらかというと透明に「なった側」の視点でストーリーが展開する作品が多いのではないだろうか?
その方が面白いだろうし、ヒーローものとしての展開も考えやすいだろう。
しかし今回の作品は、透明人間から「見られる側」の視点でストーリーが進んでいく。

セシリアは束縛の強い恋人ものとから命からがら逃れるものの、いつ見つかるかもしれない恐怖に日々怯えていた。
しかし、恋人が自殺したというニュースを受けて、これでもう苦しむことはなくなった、と安堵する。
それでもセシリアは、完璧主義の彼が自殺するはずがない、と疑っており、家の中にいても誰か人の気配がすることを感じていた。
セシリアの疑念はますます深まり、と同時に元恋人によって精神的に追い詰められていた彼女は、彼が近くにいて、ずっと見られていることを知人に訴えても、思い込みすぎだとして話半分にしか聞いてもらえない。
セシリアは、彼がまだ生きている証拠をつかむために、逃げ出してきた彼の家へ向かい、透明人間になれるスーツを見つけた。
その証拠を暴露しようと画策するも、協力を仰いだ人間が目の前で殺され、セシリアは殺人の罪を被せられてしまう。

透明人間がいる、死んだと思われている彼がまだ生きている!
目に見えない相手がいる、といきなりいわれたところで、そう簡単に受け入れることもできないだろう。
それに加えて精神的に追い詰められているようだし、参っているだけだろう、という目で見られてしまっていることで、彼女の話を真に受ける人が周りにいなかった。
その状況が彼女の立場を悪化させ、透明人間の策によって彼女を不利な立場に追い込むことで、彼女を孤立無援にし、自分のところへ戻るように心理的に追い込む彼氏。
彼女の周りから大切なものを奪い去り、じわじわと苦しめさる。
この男は自分の望みを叶えるためなら、実の兄弟を犠牲にしてでも手に入れようとする性悪な男だった。

全ては彼の手の中で踊らされていた。
しかしセシリアは、これ以上彼の思う壺にさせておかないためにも、元恋人と決着をつけるため、彼の家へと乗り込んでいく。
セシリアは隠してあるもう一つの透明スーツを使って、当に彼に自殺してもらおうと考えていたのだ。
透明人間になることによって背後から近寄り、まるで自分でナイフを使って首をかき切ったように見せかけることで。

目をつけられた側が、目に見えない存在に怯え、誰かに見られているような感じがする、という薄ら寒い感覚を感じながら、だけど誰にも信じてもらえない、という立場の苦しさを前面に出して、じわじわと不快感を積み上げていく。
精神的な苦しみの最中に、不気味な恐怖心を植え付け、愛するものを奪い、罪を被せ、全てを狂わせていく。
どこにいるかわからない、いつ襲ってくるかわからない、という対峙する側の恐怖が描かれる。

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