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パラメディック / 彼女への執着するあまりに堕ちた救急救命士

救急救命士のアンヘル・エルナンデスがこの映画の主役なんですが、見た感じからして「あ、ちょっとやばそうな雰囲気の人」って思いました。
顔から滲み出る陰鬱さというか、影のオーラをよく醸し出してるな、と。
アンヘル役のマリオカサスさんの演技が光ります。
このアンヘルという名前、スペイン語では「天使」を意味するのだとか。
だから人の命を救う救急救命士という、外国では準医師という職業についているのかな、なんて感じましたが、しかしこの映画では天使がある事件をきっかけに堕ちていく、「堕天使」へと転がるストーリー。
なんとも皮肉が効いているというか、粋のあるネーミングというか。
アンヘルには変な嗜好性というものを持っており、事故現場などから遺留品をこっそりと持ち帰るという収集癖を持っています。
また金目のものを物色して闇市の人間に売りさばくなど、職権を利用して不正を行ってしました。
遺留品を漁って持ち帰るなど、連続殺人犯からいえば記念品を持ち帰っているようなものであり、ある意味悦に浸っているようなもの。
やばそうな雰囲気を冒頭から見て取れます。

アンヘルにはヴァネッサという美しい女性の恋人と同棲しています。
一見幸せそうに見えますが、アンヘルはかなり嫉妬深い男のようで、ヴァネッサのメール相手が気になる様子。
彼女は動物の心理士の勉強をしているようで、よくクラスメイトからメールが届いていました。
世の男としては恋人の動向が気になるのは世界共通のことでしょう。
この 2人は子作りに熱心なんですが、なかなか子宝に恵まれていませんでした。
それに加えヴァネッサは勉強のために頻繁に夜に出かけていたため、自分との間に子供ができなければ、別の男へ浮気するんじゃないか、という一抹の不安もよぎっていたに違いありません。
そんな矢先、アンヘルにもっと試練が降りかかります。
ある日アンヘルは同僚のリチャードとともに救急患者を輸送していました。
しかしトラックと衝突する事故に遭い、アンヘルはこの事故で下半身不随になってしまったのです。
アンヘルは嘆き悲しみ、車椅子生活を余儀なくされるのですが、彼の精神力は強く、車椅子に乗って外に出かけ、悪態をつきながらもリハビリに励みます。
もし僕が下半身不随にでもなったら、ショックで家に引きこもり、車椅子姿を見られたくないのもあり、ますます外界の世界から離れてしまうだろうと思うからです。
そう考えると、運命を受け入れたアンヘルはすごいなと感じます。

アンヘルは事故前からヴァネッサを離したくないのと見捨てられたくない気持ちが垣間見られましたが、事故後はそれがもっと顕在化します。
子宝に恵まれないのに加え、不自由になり働くこともできなくなった彼を見限り、他の健康な男性に乗り換えられるんじゃないかという疑念の種は、一度芽生えてしまったら、なかなか取り払うことはできません。
アンヘルは非認可の追跡アプリをヴァネッサのスマホにダウンロードし、PCで行動を追跡するようになります。
アンヘルは事あるごとにヴァネッサに当たり、もっと自分の身を案じて欲しいと訴えます。
自分の境遇に同情させ、彼女に罪悪感を植え付けさせ、自分のコントロール下に置きたい、という考えが見て取れます。
そんな彼の行動に嫌気がさしたヴァネッサは、同棲を解消して家を出ようと考える。
盗聴していたアンヘルはこれはまずいとい、自ら手料理を振る舞い、ヴァネッサの機嫌をとるという優しい一面を見せるという、いかにも DV男がやりそうなアメとムチ戦法を使います。

もう無理だと思った矢先、彼の優しさに触れ思いとどまるヴァネッサ。
しかし実は追跡されていたという事実を知って姉妹、荷物をまとめてアンヘルの元から逃げ出します。
その後彼女はアンヘルの元同僚と付き合うようになり、妊娠もしたようでした。
よそ見運転をして事故に遭い、歩けなくなった原因を作った憎き同僚とくっついていた。
独り身となった彼は、一人で年を越し、新年の抱負としてヴァネッサを取り戻すことを決意する。
ここからアンヘルは真っ黒い堕天使へと堕ちていくのです。
ヴァネッサを見つけ出したアンヘルは、優しい言葉で彼女の同情を誘い家に連れ込みます。
そこでモルヒネを注射し彼女を眠らせ、ベットに縛り付け口を塞ぎ抵抗できないようにし、そしてついには薬で一時的に足の自由を奪うことまでする。
ヴァネッサを部屋に監禁し、態度が軟化することを期待し、抵抗力を奪おうとする。
アンヘルは強制的に自分のコントロール下に置き、こんなにも君のことを愛しているんだよ、分かってほしい、だから君も僕のことをもう一度愛してくれないか、復縁しよう、と歪んだ愛情で取り込もうとするのです。

またアンヘルは、自分とヴァネッサの間を邪魔しようとする人物を次々と殺していく、という暴挙に出ます。
アンヘルの部屋から叫び声が聞こえた、警察に通報する! と言ってきたお隣のおじいさん。
彼の飼っていた犬が夜鳴きをして寝られなかったアンヘルは、エサに針を含ませ殺していました。
そしてヴァネッサの赤ちゃんの父親である元同僚。
彼はヴァネッサが消えたことに不信感を持ち、警察に捜索願を出していました。
アンヘルは子供のためにベビーベッドやベビーカーを早速購入。
生まれてくる赤ちゃんを自分たちの子供として育てようという気満々です。
しかし彼は果たして生まれてきた赤ちゃんを大事に育てることができるのでしょうか?
ヴァネッサの子供とはいえ自分とは血が繋がっていない。
しかも父親はこんな身体にした元同僚。
いずれは言うことの聞かない子度に対してフラストレーションをぶちまけそうな感じがして、どのみちうまくいかないのでは、と思いました。

結局最後はヴァネッサは隙を見て逃げ出します。
しかし薬で足の自由を奪われているため立つのも一苦労。
あともう少し、と言うところでアンヘルに見つかってしまうのですが、彼女は激しく抵抗し、アンヘルを突き落としてしまいます。
アンヘルは今以上に不自由な身体へとなってしまい、声を出すことはおろか、まともに意思の疎通をすることもできなくなってしまったのです。
ヴァネッサは今度は自分が面倒を見る、と言って植物状態のアンヘルを引き取りに来ます。
このあと一体どうなるのか、なぜヴァネッサはアンヘルを引き取りに来たのか、彼女の思惑は全くわかりまん。
が、僕が勝手に推測するに、ヴァネッサは彼を心理分析の実験台にでも使うつもりなのかもしれません。
彼女は犬の心理を勉強していましたが、彼を犬として実験の対象にする。
喋れない点では犬もアンヘルも同じですから。

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