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羊たちの沈黙 / すべては天才殺人鬼の思い通り

8年間も厳重な独房の中に監禁されていたハンニバル・レクター。
ペン一つでも彼の手に渡ってしまえば、彼に殺人の道具を渡したことと同じこと。
舌先三寸でも相手を追い詰め殺すことができる、人間の心理と狡猾さに秀でた最強の殺人鬼。
警察官も恐れる狂気の犯罪者だが、見た目は紳士然として、その振る舞いからは余裕すらも感じる。
チャンスが巡ってくることをじっと待ち構える忍耐強さもあり、勝負に出るタイミングを見誤らない。
誰にも本心を悟られることなく、虎視眈眈と機会を伺う。

彼のもとに現れは一人の見習い FBIの女性警官、クラリス。
彼女はハンニバルと会う前にさまざまな注意事項を聞かされ、決して個人的な話をしてはならない、と釘を刺されていた。
しかし彼女は事件を解決したい、犯人を捕まえたい、という思いが先行し、犯人に近づく為なら、情報を得るための取引条件として彼女の過去を教える、という条件を呑んでしまったのではないだろうか、と個人的には感じている。
過去の話を包み隠さず話してくれることで、ハンニバルの中である策略が構築され、自分の計画通りにことを運ばせたのではないだろうか。
全ての人物は、彼の手のひらの中で踊らされていたのではないか。

ハンニバルは心理学に通じてもいれば、人の観察眼にも秀でており、並外れた記憶力や謎解きも得意とする。
人を観察しただけでどのような趣向の人間かたちどころに見抜いてしまう。
彼はドクターの人間性を熟知した上で、貴重な情報をクラリスとの面談中でわざと聴かせることによって、
手柄欲しさにどんな手を使うか予想していた。
そして思惑通りことを運ばせ、警官たちが隙を見せる機会をうかがっていたのではないだろうか、という気がしている。
警官の目を騙し、難なく監視の目から抜け出したハンニバル。
狡猾で頭がキレる殺人鬼は、長い間監禁されていたとはいえ、その牙を鈍らせることなく研ぎ続けていたのだろう。

ハンニバルはクラリスのことをどう思っていたのだろうか。
独房で初対面のときに、彼はまばたきもせず目をそらしもせず、クラリスのことをジッと見つめていた。
彼女の正直でまだ未熟な性格と、目をみはるほどの美しさに、心を奪われたのだろうか。
彼はやろうと思えばクラリスを殺すこともできたかもしれない。
だけど、彼はクラリスに似た何かを感じ、たのではないか。
行動分析学を学び、謎解きにも通じている賢い彼女を気に入ったのではないか。
そんなハンニバルの心理が、クラリスに犯罪資料を突き返すところで、彼女の指先にそっと触れたシーンに表現されているのではないか。
それは彼なりの愛情表現だったのではないかと感じている。
彼はクラリスのことを気に入った。
だから彼女が正式に FBI捜査官となったときに、わざわざ祝砲をいうために電話をしたのだろう。
クラリスは、ハンニバルが認めた数少ない人間の一人、だったのかもしれない。

アンソニー・ホプキンス、不気味な雰囲気がいい味出していた。

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